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| 2004/3/25 |
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『ニシノユキヒコの恋と冒険』
著 者:川上弘美 出版社:新潮社
発行日:2003年11月 本体価格:1,400円
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みんなで1冊の本について書いているので、内容紹介というより、自分がどう思ったかを中心に書くことになります。そもそも恋愛観みたいなものを友達同士ではなくこんな公のところに書くのなんて、筆名でよかったーと思うし、それでもやっぱり、原稿を提出したあと実際に載っている自分の文章を読むのは、とても恥ずかしいものです。おそるおそる、扉のすき間からそっとのぞくようにしか読めません。でも、1か月くらいたってほとぼりがさめたころに、勇気を持って他人が書いた文章のような気で読み返してみると、「おー、いいこと書いてるじゃない」と自画自賛したりもして。恋ほどではないにせよ心が揺れるものなのです。
「どうして僕はきちんとひとを愛せないんだろう」。ユキヒコがそう言う場面があります。じゃあ「きちんと愛する」ってどういうことなんでしょう。自分の何を指してそう言ったのか、ユキヒコに聞いてみたい気がします。基本的に女性側の立場からの文章なので、ユキヒコ自身がどう考えているのかは、相手の女性の目にどう映ったかを通してしか私にはわかりません。でも、聞いたところで結局わからないのです。自分の気持ちなんか、自分自身でもわからないことだってあるし。話して言葉にすれば通じるというわけではなく、それが、二人の間にすれ違いをうんだり、美しき誤解をうんだりして、わからなかったりわかった気になったり大きく揺れるのが、恋愛にドキドキするゆえんなのでしょう。
10編それぞれに、ユキヒコと女性とのいろんな関係があります。ユキヒコはいったいどう思っていたのか、それこそ、「ニシノユキヒコの本音」で1冊書けるくらい、ユキヒコ側の思いというのもあるはずです。でもわからない。恋愛の当事者同士では口にできないこともあるし、口にするのがこわいこともあるし。心が通い合っていると安心できている二人ならそうでもないでしょうが、つき合い始めだったり、ちょっとぎくしゃくした関係だったりすると、むしろ、恋愛相談をしている友達にこそ自分の気持をたくさんしゃべっているかもしれません。本当に伝えたいのは、恋しているその相手なのに。
たくさん言えないことがあったり、とり戻せない時間があったり、こうして感想をまとめようとしてぱらぱら読み返してみると、最初に読んだときにうっかりすり抜けてしまっていた場面や文章が多いことに気づきました。大切な人との間では、なるべくひろい落とすことなく、思いっきりいろんなことが伝え合えれば、とてもしあわせですね。クールなイメージの西野君が感情をはっきり表に出してあふれる気持ちを伝えたシーンが、印象に残っています。 |
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【楽天スタッフ 笑】 |
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