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| 2004/1/5 |
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『菊燈台』
著 者:渋沢竜彦/山口晃 出版社:平凡社
発行日:2003年11月 本体価格:1,800円
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あけましておめでとうございます。2004年も楽天ブックスをよろしくお願い致します!
新年最初の読書日記ということで、とっておきのゴージャスな一冊を選んでみました。渋澤龍彦の小説が現代アートとのコラボレーションによって蘇った、「ホラー・ドラコニア少女小説集成」シリーズ。全5巻となる予定で、本書『菊燈台』はその第2巻。とにかく、素晴らしい!渋澤龍彦の物語も、山口晃氏の挿画も、鈴木成一氏の装丁も、そしてこの企画自体も。もちろん第1巻の『ジェローム神父』(挿画はあの会田誠氏!)も、とにかく素晴らしいのです!!
…と、熱くなってしまった自分がちょっぴり恥ずかしいのは何でだろう?と思ったのですが、それはつまり渋澤龍彦が、ある種の人々にとって通過儀礼的に通って来ざるを得ない文学者だからで、そして誤解を恐れずに言うと、カルト的な読まれ方をされがちな文学者だから…。異端、倒錯、残酷、幻想、そんなイメージにとりまかれた彼の著作は、現実に反抗したい若者にとってかなり心くすぐる世界。私もご多分に漏れず学生の頃は彼の著作を読みまくってました…。その後はパッタリと読まなくなってしまったのですが、そんなカルト的な読み方をふっと思い出し、気恥ずかしいような気がしてしまったのでした。
でも今改めて渋澤龍彦の作品を読んでみると、俗に言われている異端だとか倒錯だとか、そういう煽動的で露悪的な事柄など本人は本当はどうでもよかったんじゃないか、と思わずにいられません。彼はただ、人間だとか美だとか芸術だとか世界などの可能性を追求せずにはいられなかっただけなのでは。今回久しぶりに読んでそういう感想を持ちました。
で、この『菊燈台』ですが、中世日本を舞台に、記憶を失った少年・菊麻呂が不思議な出来事に翻弄されるお話。とてもスッキリとした短い物語にも係らず、或るイメージから全く別のイメージへと大胆に飛躍していくさまは、非常にダイナミックで斬新。前後の因果関係など気にせず、イメージの飛躍や細部のきらめきを楽しむ、そんな贅沢な読み方ができる極上の物語です。
そして、その物語のために描きおろしたという山口晃氏の挿画は、大和絵の形式を用いて丹念に描き込まれた繊細で美しい画。しかしよーく見てみると、中世という時代設定にも係わらず、背景に原子力発電所や自動販売機があったり、部屋の中にタイムカード打刻機やコンセントプレートがあったり、雲や松の木の細部がネジ留めされてコードが露出していたり。SF的な大和絵と言いましょうか、このイメージの大胆な飛躍…!この画もまた、因果関係など気にせず、イメージの飛躍や細部のきらめきを楽しむことができる、極上の画なのです。
実用には向かないけれど、芸術品として一級品。そんな物語と画が一冊の本となって今のこの世の中に出版されるなんて…本当に有り難いことです。さらに装丁が美しく、「モノ」として所有したい!と思わざるを得ないほど魅力的。本だって商品なのだからこのくらい「モノ」としての価値が無くては!と心底思います。そんなわけで、今年の冬休みは、この宝石箱のような本を取り出しては絵を眺めたり、拾い読みしたりして、とても贅沢な時を過ごしたのでした。ただ一つ言うなら、帯の惹句「話題のロリータ、ニンフェット伝奇小説集」とか、シリーズ名「少女小説集成」っていうのは、どうなんでしょう…。全然「ロリータ小説」じゃないので、そーゆーの期待してる人にはオススメできません!と、老婆心ながら一応書いておきます(笑)。
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