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読書日記 2004年3月31日更新
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2003/9/4
『薔薇を散らせはしまい』

著 者:伊藤文学
出版社:批評社
発行日:1993年09月
本体価格:2,718円
藤野千夜さんの芥川賞受賞作『夏の約束』の中で、主人公(の一人)が同性愛者であることが発覚して会社の男子寮を追い出されるくだりがありました。失笑とともに「ホモがバレた」と乱暴に混ぜっ返されてしまうような事件なのですが、決してコミカルなエピソードではありません。藤野千夜作品には、「異端の人たち」が、違和感のある世界を漫然と受け入れながら、淡々と生きている様が描かれています。当事者にとっては一大事のはずなのに、真正面からの攻撃を、ゆるやかにいなすような感情の機微が微妙です。ごく一部分の嗜好は異なっていても、それ以外は、普通の人と同じ、普通の感覚があるがゆえに、自分が普通ではないことの世間とのきしみを、普通以上に感じているではないかと想像してしまいます。藤野作品の軽妙な語り口と、希薄さ、の裏にある、語り得ない余白にこそ文学的余韻は響いているのだとはいえ、悲痛な思いを抱えて日々を生きる人たちの、静かな諦念や、内面の葛藤みたいなものは、もう少し言葉として聞いてみたいような気もするのです。

そんな「異端の人」たちのための「場所」を作った人がいます。男性同性愛誌として知られる『薔薇族』の創設者にして編集長、伊藤文学氏。彼の『薔薇を散らせはしまい』という、なんだか凄いタイトルの本を読んで、ちょっと感じ入るところがありました(伊藤氏の著作のタイトルは、どうにも気になるものが多いのですが、ネーミングの抜群の巧さは、「薔薇族」という言葉を生み出したことからも伺えるでしょう)。あえて口さがなく、ズバリ言ってしまって「ホモのエロ雑誌」であるところの『薔薇族』。そこに連載されていた伊藤文学氏の二十二年にわたるエッセイを集成した本書は、異端者であるがために辛い思いをしている「読者」たちを擁護し、真摯な言葉を掛け続ける、こんなに温かくも優しい「編集後記」があったのか、と驚くばかりの一冊です。読者からの手紙が数多く紹介されているのですが、同性愛であることを隠し続け、孤独に生きてきた人たちが、この雑誌を発見し、この雑誌のもとに集っていく様は、ちょっと感慨深いところです。同性愛者であるがゆえに迫害される「読者」のために悲しみ、特に80年代中盤以降は、エイズの問題がクローズアップされてくるため、強く同性愛者の無軌道な性行為に対しての警鐘を鳴らし続ける姿勢。誰かを励ますこと、の力強さが伝わってきます。

同性愛者ということが「親にバレた時」、「妻にバレた時」などの痛い瞬間(かなり痛いだろう、それは)、その気まずさよ。父は怒りをあらわにし、母は泣き、妻は途方に暮れる。想像を絶する修羅場ですね。そして、決して理解されることがない哀しみ。なによりも、自分で自分が「男なのに、男が好き」という事実を、直視して、それを認めるまでの心の軌跡が、痛ましいのです。大島弓子さんに『つるばらつるばら』という快作がありますが、皆さん、同じように切ない思いをしたのだろうな、と思います。現実はもうちょっと美しくない感じのようなのだけれど(笑)。それにしても、色々な人がいるな、と思います。江国香織さんの『きらきらひかる』に出てくるような、世間体をはばかって偽装結婚するような事態が、ままあることなのだな、とか、国内の100人に6〜7人が同性愛者なのか(しかも1977年時点で)、とか、カルチャーショックの飽和状態です。文章は限りなく優しく、人が人を思いやることの美しい力に満ち溢れている本なので、理由は不明なのですが、なんだか勇気がわいてきます。お勧めはしませんが、興味深い一冊だと思います。

ついでに、となりますが、『NEW SELF』『ウィークエンドスーパー』『写真時代』など伝説の「エロ雑誌」を手がけた末井昭さんの『素敵なダイナマイトスキャンダル』は、もうひとつの「編集長」打ち明け話。こちらの編集長は「読者のことは考えてなかった」「他の編集者がどう思うか」だけを意識していたという、全く違った方向性であるところが興味深い一冊。中に『薔薇族』と『NEW SELF』が同時に発禁処分となった時の新聞記事が抜粋されていました。方向性は違えども、それぞれなりに時代と闘っていたのだなあ、と思うところです。この本は、末井さんが中学生の時に、お母さんが隣家に住む年下の男性と「ダイナマイト心中」をして、爆死されたことから語りおろされているのですが、あまりにも悲惨な出来事が飄々と書かれているので、ちょっとびっくりします。不思議な魅力を持った方だな、と思います。昨年話題になった写真集『たまもの』で、末井昭さんを知った方には、是非、読んでいただきたい一冊です。
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