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読書日記 2004年3月31日更新
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2003/8/8
『塗仏の宴(宴の支度)』

著 者:京極夏彦
出版社:講談社
発行日:1998年03月
本体価格:1,200円
さて、『陰摩羅鬼の瑕』の発売を記念しての、読書日記・京極夏彦週間、どん尻に控えしは、私の『塗仏の宴』でございます。最新作『陰摩羅鬼の瑕』は、果たしてどんな物語なのか、情報に一切、耳を塞いでいるので、もしかすると、未来や過去の物語であるかも知れぬ、などと勝手に想像して楽しんでおります。願わくば中禅寺(京極堂)が古書肆を営む前の、教員をやっていた当時の物語を読んでみたいな、と思っているのですが如何でしょう(無理かな)。榎木津(探偵)の軍隊時代の話なども興味深いですし、木場修(刑事)との少年時代のエピソードだけでも1冊になりそう、などと、強烈なキャラクターたちの知られざる活躍が明らかになるのを待ちわびているところです。『姑獲鳥の夏』の雑司ヶ谷嬰児連続殺害事件から、『塗仏の宴』まで、わずか一年程度なのですね。意外と物語内の進行時間は短く、今回もまた、若々しい主人公たちとまみえることとなるのでしょう。本書『塗仏の宴』は、番外編の『百器徒然袋ー雨』『百鬼夜行ー陰』を除けば、シリーズ「前作」ということになるかと思います。前編(『宴の支度』)、後編(『宴の始末』)、各600ページ強の圧倒的なボリューム。さあ感想を書きだそうと思ったものの、ふとキーを打つ指が止まってしまいました。5年近く前に読んだままですから、さすがに薄れてしまった印象。面白かった記憶はあるものの、ディテールが思い出せない。前編が発行されてから、後編が発行されるまで、少し間があったため、後編が発行された際には、すっかり前編を忘れており、あの時も読み返したのですが、またも再読です。そもそも「塗仏(ぬりぼとけ)」って何、という状態。『それが塗仏のことわりですもの』で終わるのだったかな(おいおい)、とか、そういうおぼろげな感じなので、『陰摩羅鬼の瑕』の前の総復習となってしまいました。いや、意外と、新しい発見も多かったですね。ともかく饒舌なこのシリーズを読みこなすには、効果的に読み飛ばすことが肝要なのでは思うところもあります。ところが思わぬ伏線を飛ばしてしまうと、面白さが半減してしまう。じっくりと腰を据えて読むのがベストですが、こうした再読の効用もたしかにあるもので、皆様にもお勧めしたいと思いました。

今回の物語は、世の中から消えてしまった「村の記憶」を持つ男性、光保が、おなじみ、関口(小説家)に相談を持ちかけるところからはじまります。二次大戦前、自分が駐在として赴任していた伊豆の山村を、戦後しばらくして訪ねてみると、そこに村があったという事実自体が消えてしまっている。光保は、かつて、この村の中心であった旧家、「佐伯家」が「人に似た形の死なない生き物」を守り伝えているということを知っていたがため、なんとしてもこの村を訪ねたいと思っていたのです。何故、村は消えてしまったのか。いや、本当に村はあったのか。光保に依頼され、この消えた村、へびと村があった場所を訪れた関口は、そこで、あるものを発見し、そして奈落の底につき落とされていきます。毎度、毎度、不遇な関口ですが、今回の事件では、相当、きつい目にあわされることなります。この消えた村を巡る物語は、順繰りに語られる、一見関係なさそうないくつかの長いエピソードによって紐解かれていき、やがて一筋の流れに合流して、驚くべき結末を迎えます。戦前、戦後にわたり、ひとつの家族が陥れられた、壮大かつ驚愕すべきゲーム。恒例、中禅寺の「憑物落とし」の問答もまた圧巻です。本作に登場した「ゲームの判定者」と中禅寺の対決は、おそらく最新作にも引き継がれるのではないかと予想しておりますが、ますます『陰摩羅鬼の瑕』が楽しみになって参りました。

このシリーズ、妖怪が登場するものと思われている方がいらっしゃいますが、シリーズの象徴ではあるものの、むしろ「妖怪譚」は、怪異な事件に論理的な帰結をもたらすための「比喩」となっています。「妖怪」という怪異は、名づけられた表層であり、その深層には、その共同幻想を持つにいたった人間たちの条理が存在するのです。「世の中にはね、不思議なことなど何もないのだよ。関口君」。中禅寺の「憑物落とし」は、散りばめられた点と点を線で結び、論理性のもとに一枚の絵を浮かび上がらせ、事件に携わる人々の妄執を払っていきます。特異な事件ではあったが、怪異などではなかった、という結末に、毎度のことながら驚かされるのですが、人の心の中の不条理や、数奇な運命こそ、真の不思議ということなのかも知れません。奇々怪々とした昭和浪漫の物語世界ですが、もうひとつの魅力として、「語り部」たちの心情の卑近さがあるのではないかと思っています。現象を追うばかりではなく、あまりにも説明的なほどに、心の軌跡についての記述が綿密なのがこの作品の特徴かと思います。中禅寺(京極堂)や榎木津(探偵)は、共感不能の異人たちですので、物語の「語り部」にはなり得ない。むしろ読者は、関口(猿)や、中禅寺敦子(京極堂の妹)、木場修(刑事)、またその都度の脇役たちの視点からこの世界を見ている(鳥口や和寅は?・・・)。「語り部」たちの思惟は小市民的ですが、それゆえに感じ入るところも多いのです。関口(猿)の自虐的な内省癖は強くなる一方で、本編では、人格崩壊に近い状態に陥ります。まあ、これは置いておいて(笑・・・最新作では無事社会復帰できるのでしょうか)、例えば、中禅寺敦子が「自分がどういう考え方をする人間なのか」いうようなことをずっと考えていること。自分をめぐる事象を「どう考えるのか」ということへの拘泥。一見、本編にはあまり関わりがないような思惟ですが、正常と偏執の境界は薄い皮膜であり、いつしか妄念に憑かれた心のゆがみが、世界のひずみをたらしてしまうということもないとはいえないのです。この心の奈落は、平凡な人間たちもが踏み出しかねない異世界への入り口となる。奇怪な事件も、すべては、心の迷妄が見せたあやかしなのか。個人の心の世界の彷徨が綿密に描かれる物語であるがゆえに、圧倒的なパワーですべてを覆してしまう榎木津(探偵=神)の荒唐無稽ぶりに爽快感を感じたり、中禅寺(京極堂=拝み屋)が、事件の特異性を無力化し、絡み合った怪異な現象を論理的に分解し再構築する「憑物落とし」がカタルシスとなるのではないか、と、あらためて感じるのでした。

一見、怜悧な中禅寺がまれに垣間見せる感情の発露に、驚かされることがあります。中禅寺が悲しそうな目で誰かを見つめたという一節にさえ、ドギマギしてしまうのです。榎木津探偵がカマドウマと水気のない菓子が苦手のエピソードも、毎回、楽しんでいて、実は物語を読み解くことよりも、このキャラクターたちと一緒の時間を持てることが、なにより楽しいのかと思うところです。知り合いに『このシリーズ、全冊、買っているんですけれど、一冊も読み終えたことがないんですよ』と言われる人がいました。それでも、何故、買ってしまうのか(笑)。不思議です。いや、世の中に不思議なことなどないのです。きっと彼は最新刊も買うのだろうな。京極夏彦作品、スタッフの感想を続けさせていただきましたが、最新作『陰摩羅鬼の瑕』、是非、是非、皆さんの感想をお待ちしております。
【楽天ブックススタッフ 知】


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