こんな本、初めて見ました。これでも文庫なのです。1060ページ、厚さ40mm、1円玉2個分、小指の先から第二関節まで。書棚でしっかと存在を強調している、その現物をこの目でとらえたときは衝撃を受けました。
前2人と同じく、私も京極作品は初なので、どれがいいかすすめてもらったのがこの『魍魎の匣』(もうりょうのはこ)です。4桁のページ数に圧倒され、カウントダウン企画に参加したことを後悔する気持ちが若干あったことを告白いたします。かばんに入れるのもかさばるのです。本というより、まさしく「箱」に近い形状です。
ともかく読み始めたわけですが、意外にすっと物語に入りこんでいきました。気が付けばあっと言うまに200ページくらい読み進んでいた――とまではさすがにいきませんが、「妖怪シリーズ」と銘打ってあったことや表紙の絵の感じから受けたおどろおどろしい時代がかったイメージとは違ったものでした。ちょっとあぶなっかしい頼子と加菜子の心の交流、そして事件、さらに広がる事件、事件。登場人物は饒舌でセリフは長くよくしゃべることしゃべること。ページ数がある分、対読み進む時間比ではポンポン展開が早いとは言えないですが、でもなぜか文章はすんなり入ってくるし、「匣」の不気味さにも引き込まれて、投げ出さずに読み終えられたのでしょう。
事件の謎解きは、600ページあたりから始まりました。「えーっ、残り460ページかけてたっぷり謎解き?」と思いきや、なんとなんと、と言うか、やっぱりと言うか、どんでん返し。しかしそれもまだ800ページ。あと260ページ、優に小説1本分まだ残っています。思わず「なんということでしょう」というつぶやきをもらさずにはいられませんでした。
バラバラ殺人にマッドサイエンティスト、それに登場人物の関係も複雑怪奇です。でも、悪人というよりは、心のやさしい人が多かったように感じます。それゆえに苦しみ、辛い境遇から逃れられなくなっているような、哀しいお話なのですね。
陸さんも言うようにあとあとの伏線もあるので、時間のある夏休みに、前の展開を忘れないよう短期集中で挑戦するとよろしいかと。 |