京極夏彦の新刊8日発売までのカウントダウン企画『京極夏彦を読んで読書日記を書こう』も本日で3日目、昨日の陸さんに引き続き、実は私も京極作品初体験者なのです。
私が選んだ本書「嗤う伊右衛門」は「四谷怪談」をベースとしたお話です。京極夏彦のフィルターを通すと・・あの有名な「お岩さん」のお話はどんな展開になるのでしょう?前評判で“泣ける恋愛小説”でもあると聞いていたので期待大です。
お化けが登場するときによく口走る「恨めしや〜」からわかるように、お化けは負の感情(未練、怨念)で出てくるわけなのですが、本書のお岩さんは性格のまっすぐな強い女性なため、人を恨んでどうこうするタイプではありません。病気で顔は崩れてしまうのですが、必要以上に負い目を感じることもなく堂々としていて、現代の女性から見ても共感できる素敵な人です。その内面の美しさを見抜いて婿となる生真面目な浪人・伊右衛門もかなりマイペースないい男。その2人を中心として織りなされる人間模様がきっちりとした構成で描かれます。
お互いに惹かれながらも心が繋がらない「お岩」と「伊右衛門」。不器用なんですよね〜。すれ違ってばかりです。そこに人間の悪い部分のかたまりのような伊東喜兵衛によってもたらされる悲劇がさらに悲劇を呼びます。どうしようもない運命のすれ違いや人間の根底の感情が描きだされているところ、美しいともいえる幻惑的な描写などは、私が大好きでよく読むスティーブン・キングの小説を思い出しました。キングの小説同様、本書も視覚的に訴えかけてくるものがあります。全体を覆うじと〜っとした暗い雰囲気が日本の怪談だなーと思わせますが。ラストシーンも日本っぽい終わり方です。
アメリカの人がこれを読んだらどう思うのでしょうか?「リング」でジャパニーズホラーに注目が集まったことでもあるので、この日本人の感覚がアメリカ人に理解してもらえるのか興味あるところでもあります。感情の処理の仕方の不器用な感じとか、すれ違ってはしまうけれどもお互いを本当に思いあっている男女の純愛とか、ラストシーンの情景とか・・日本人ならぐっとくるこの部分。そろそろ暑くなり、ようやく夏もやってきたことですので・・どうですか?現代版の「四谷怪談」。日本の夏を味わいたいあなたにオススメです。 |