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読書日記 2004年3月31日更新
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2003/8/12
『デッドエンドの思い出』

著 者:よしもとばなな
出版社:文藝春秋
発行日:2003年07月
本体価格:1,143円
最近、まとまって「読書」をする時間が全く取れない毎日を過ごしています。本を読む時間というのは、通勤電車の中か、突然ぽっかり時間が空いて1人でカフェで時間をつぶしたりするときが多くて、なかなか集中して本の世界に没頭することがままならず…。でも、この『デッドエンドの思い出』を読んでいるときは、なぜか落ち着いた気分で物語の中の世界にハマることができました。

『デッドエンドの思い出』は、よしもとばななの最新書き下ろし短編集です。本を手に取ると、まず帯に書かれた「これまで書いた自分の作品の中で、いちばん好きです。これが書けたので、小説家になってよかったと思いました。」という作者自身の言葉が目に留まりました。そこまで言わせるとは!というのが表題作「デッドエンドの思い出」。しかし、私の心に一番強く印象を残したのは、冒頭の作品「幽霊の家」でした。

実家の洋食屋を継ぐことを決めている主人公と、実家のケーキ屋を継ぐかどうかを迷いながらバイトに精を出している岩倉くんの、淡々とした関係が淡々と描かれているのですが、なんとなく2人の醸し出す雰囲気が、初期の短編『キッチン』に登場する「みかげ」と「雄一」を思い起こさせ、懐かしくなりました。2人の会話を中心にシーンが進んでいくところや、作った鍋やカレー、オムライスを一緒に食べるところ、どこか存在感が希薄な岩倉くんのキャラクターまで、いかにも「ばななワールド」な感じです。しかし、初期の短編の雰囲気はそのままに、作者の「書きたいこと」が無駄なく伝わってくる気がしました。この作品だけでなく、この本に収録されている5編の短編すべてに共通する、静かで、もの悲しく、でもゆったりと幸せな空気は、私が好きだなーと思う「ばななワールド」そのもので、初めて読むのに、なぜか懐かしい気持ちになりました。

不思議なもので、電車の中でこの本を読みふけり、物語の世界に没頭していても、目的の駅に着いたらすっと日常の風景に戻っていくことができます。そんな、日常に溶け込んだ1冊として、何度もさらりと読み返したいのが、私にとってのよしもとばなな作品です。
【楽天ブックススタッフ 菊】


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