本書の作者である大沢在昌といえば「新宿鮫」が有名ですが、実はこれまで大沢作品は読んだことがなく、これが初めての大沢作品となりました。北海道の千歳空港で、Airdoの搭乗手続きを待ちながら、帰りの機内で読む本を物色していた時に、ハードボイルドな表紙に惹かれて手に取りました。つまらなかったら機内で退屈なので、合わせて週刊誌も買ったのですが、結局、週刊誌には一切手をつけず、羽田から家につくまで、飛行機・電車・バスの車中でも読み続け、家に帰ってからも止まらずに、その日のうちに読了しました。とにかく面白い。この作品を機に、後日「新宿鮫」シリーズも読みましたが「新宿鮫」が好きな人はもちろん、誰でも楽しめると思います。
舞台はここでも新宿です。ただ、読み進めるにつれてわかってきますが、時代は近未来、ということで、新宿署に鮫島もいなければ、そもそもヤクザもいない世の中です。しかし、悪人がいない訳ではなく、むしろ治安は最悪です。はっきり言って無法地帯で、ヤクザの代わりに荒廃した町を仕切っているのは、海外からの労働力確保のため、日本で生まれた子供には日本国籍を与える、という法律により、不法入国してきた外国人と、日本人との間に生まれ、捨てられた「ホープレス」とよばれる混血児達。もちろん、全てのホープレスが悪人というわけではなく、この物語の主人公、私立探偵の「ケン」もホープレスで、彼は失踪した女性の行方を探す、という依頼を受け、その足取りを追ううちに、いつしか巨大な事件に巻き込まれていきます。
荒廃したこの世界にも警察組織があり、ケンは事件を通して、警察官の池谷と知り合います。ホープレスに家族を殺されて、ホープレスを憎む警察官の池谷。お約束のように、池谷も事件に巻き込まれ、お互い反発しながらも、信頼を深めていく二人。
劇中に「池谷は嫌な野郎だが、骨のある男だった。同じことを、池谷が俺に対して感じていることはわかっていた。つまり、これは友情という代物だ」なんて一節があるのですが、こういう展開はいいですね。ベテラン刑事と新米刑事とか、刑事と犯人、そんな二人の友情物語。例えるならば、「逃亡者」の「ハリソン・フォード」と「トミー・リー・ジョーンズ」のような、そういう展開が好きなのです。
格好いいのは、鮫島だけではないですよ、ということで、大沢作品の入門として、読んでみてはいかがでしょうか? |