詩人の銀色夏生さんが、毎年4月〜翌年3月までの出来事を綴った「つれづれノート」シリーズも今作で12冊目。毎年発売になるのをわくわくして待っている、日記好きの私です。ただし、あくまでこれは「日記」なので、詩人としての銀色夏生という人物に自分なりのイメージや夢を抱いている人は、もしかしたら読まない方が良いかも知れない作品です。生活感たっぷりだし、ご本人やお子さんたちの写真もたくさん掲載されているので、そういう部分を知りたいという人にはおすすめします。
今回は、長年住んでいた東京を離れ、実家のある宮崎県に一家でお引っ越し。さらに犬を飼い始めるという、変化のある1年でした。前作『どんぐりいちごくり夕焼け』では、夫であり、長男サクぼうの父親でもある「イカちん」と離婚し、新天地を求めていた銀色さんも、今回の引っ越しでさらに自由きままにわが道を行く決意を固めています。離婚後のイカさんとのメールでのやりとりは、ご本人も言っているとおり平行線でお互いに絶対にわかりあえない考え方の違いを感じさせます。これは、銀色さん側から見ればイカさんが理不尽なんだけれど、きっと逆から見ればまた別の見方もあるんだろうな…ぐらいの目線で読まないと、不公平な気がしました。なにせ銀色さんの本なので、イカさんがいくらメールで反論しても、そのさらに上を行く反論を彼女が書いてしまえばそれが「事実」として読者には受け止められるわけなので。
カンチ(かんちゃん・姉)とチャコ(サクぼう・弟)の2人の子供たちはすくすく育っていて、その子供たちとのやりとりを読んでいると、子育ての楽しさと難しさが伝わってきます。しかし、銀色さんというのは本当に素直な人なんだなと思ったのが、子供が悪いことをし続けて、ムカムカを通り越して情けなくなって泣きながら文句を言った、というくだり。親だから、子供だから、というのではなく、1対1の人間同士として対等に付き合っている雰囲気をこのエピソードから感じました。それにしても、カンチは本当にきかん気が強そう。やりたくないことをさせられそうになったら「キーッ」と奇声をあげるとか、弟のチャコをすぐに蹴ったり叩いたりするとか、やんちゃな問題児っぽいです。でも、ひとりでもたくましく生きていけそうなところは、さすが自由きままな銀色さんを見て育っている子だけあるのかも。逆にチャコはややおとなしめ。男の子なので、今後どんな風に育つのか予想がつかなくて楽しみです。
今回、ついに犬を飼い始めた銀色さんの心境の変化も興味深いです。犬を飼うかどうしようか迷い始めた日から、日付を追って読み進めるごとに、逡巡した挙句に結局飼うことに決め、最初はいやだったのがだんだん可愛くなってきて、でもイタズラばかりされたらやっぱり可愛くなくなって一瞬手放すことを考えてみたり…。その時々の素直な心情が綴られているので、「アンタさっきと言ってること違うじゃん!」とツッコミたくなることもしばしば。でもそれがまたいい味を出しているんですよね。犬のマロン(ミニチュアダックス)の写真も掲載されていますが、本文とあわせて見るとまた可愛さも格別です。
銀色さんの生活は、マンションや土地や別荘をポンと買ったり、家を建てたり、外食したり衝動買いしたり長期旅行に出かけたり、という贅沢三昧な部分と、毎日とれたて野菜を買ってきて自炊したり、たまにごはんを作りたくなくててきとうに済ませてしまったり、という庶民的な部分が同居しています。その独特な雰囲気を覗き見できるのが、このシリーズの醍醐味だと思うので、今後も銀色さんが「もうやーめた」と思うまでは、ずっと続けて欲しいなと思います。
それにしても、続きが1年後まで読めないなんて、今から待ち遠しい! |