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読書日記 2004年3月31日更新
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2003/6/4
『みんなワッフルにのせて』

著 者:ポリー・ホーヴァート/代田亜香子
出版社:白水社
発行日:2003年03月
本体価格:1,500円
空想癖と孤独癖が強くて、いつもうわの空で、注意不足を叱られていて、自分が子どもなのに子どもが嫌いで、子ども扱いされることはうんざり。友だちといえば、ちょっと変わった大人や老人しかいない。けっこう、他の人から同情されるような境遇にいたりするんだけれど、悲観的にも、感傷的にもならず、どこか遠くにいきたいな、とか思いながらも、結局、どこにもいかなかった。そんな少年少女時代を過ごされた大人の方は「ヤングアダルト」というジャンルを読むと面白いかも知れません。そうした人たちが十代の頃には、ヤングアダルトなんて興味がなかったはずだから。気丈夫でクールな子どもは、きっと古典児童文学や、背伸びをしてでも大人が読む小説を読んでいたに違いあるまい、と思うのです。楽天ブックスでは、以前に在籍されていた【瑞】さんの英断で、同じ少年少女向け物語でも、ヤングアダルトではなく、ジュブナイルをジャンルのひとつとして採用しました(おかげで「ジュブナイルとは何か?」という説明を何度、人にすることになったか)。ジュブナイルはコミックと親和性が高いけれど、ヤングアダルトは、やはり児童文学から派生したもの。とはいえ、子どものみならず、ある種の大人の方たちにも人気の高い、不思議な魅力を持ったジャンルです。今はまっとうな大人になった皆さんにも、子ども向け、と敬遠せず、是非、この世界に触れて欲しいと思います。こういう小説が読みたかったと思われるかも知れません。最近は海外のヤングアダルト作品が話題となることが多いですね。理論社をはじめとした児童書系出版社は無論のこと、(以前ならば、福武書店(現ベネッセ)や徳間書店のシリーズが好きでしたが)最近は、この白水社のシリーズに心ひかれる作品が多く注目しています。

さて、本作『みんなワッフルにのせて』は、カナダの田舎の港町を舞台にした物語。ご多分に漏れず、いきのいい、変わり者の女の子が登場します。プリムローズ。彼女の両親は暴風雨の晩、船で行方不明となり生存を絶望視されます。ひとり遺されたプリムローズは、親戚のおじさんにひきとられるのですが、彼女の心は、両親が死んだことを一切みとめません。周囲の同情をよそに・・・さらっと生きていく、のです。だって、お父さんもお母さんもどこかで生きているのだから。そう信じているものの、外野はうるさく、更に何度も痛ましい事故や不思議な事件に遭遇しては、ひどい目にあい(ちょっと、どうかな、と思うぐらいの)、同情は増すばかり。客観的には、かなり「可哀相な子ども」なのに、彼女の主観で語られる世界はポジティブで、ちょっとした達観で世界を捉え、観察しているかのようです。この物語には、クセのある魅力的な大人が沢山、登場します。それぞれ、どこか悲しい大人たちではあるのですが。プリムローズが、彼らと交わす会話がなかなか良いのです。バランスの崩れた思いこみの強い大人と、冷静で寛容な子ども。この問答がこの作品の魅力かも知れません。いつも強烈なナフタリンの臭いをさせているボケてしまった老婆との会話など、本当はとても哀しいものであるのにね。普通なら気が塞がってしまうようなことが沢山描かれているのだけれど、プリムローズがナチュラルに世界を肯定的に捉えていることに救われます。知り合いで、プリムローズが作中で負ったのと同じ怪我をされた方がいます。「身体の一部を損なう」怪我であったため、「ショックで、当時は、しばらく起き上がることができなかったよ」と「笑って」言われていました。リアルの重さは、物語の比ではなく、どんなことも乗り越えられる人間の強さに打たれたことがあります。無くしたものは返ってこないけれど、そこから得たものは大きい。辛かった時間が養ってくれたものもある。なかなかそうは思えないのだけれど、そんな気持ちもあると信じたいですね。

物語の中に、どんなメニューでもワッフルに乗せて料理を出してくる風変わりなレストランが登場します。ステーキでもグリルでも、フルーツでも、そしてワッフルでも。変わった店には、案の定、変わったオーナーがいて、十一歳のプリムローズに、滔々と人生を語ったりします。こういう道具立てのある物語っていいでしょう。プリムローズはそこで料理を教わるのだけれど、章末には、かならず彼女の紹介による作中に登場した料理やお菓子のレシピが載っています。寓意もちょっとはいった、面白いレシピです。「防虫剤の臭いのするなつかしい味のクッキー」だけは、いただけないかな。

さて、私信ですが、6月は読書日記ルーティンに復帰したいと思っています。楽天ブックスも【瑞】さんを失って久しいのですが、残されたスタッフが、頑張って乗り越えようとしているので、私もささやかにお手伝い。失われたものは返ってこないけれど、以前よりも、充実したコーナーになったと言われるよう、皆と新しいものを作っていきたいと思います。
【楽天ブックススタッフ 知】


【読書日記】では、楽天ブックススタッフが自分たちの読んだ本を日記形式で紹介していきます。

新刊本・未刊本・絶版本。定番から変わった本まで、いろいろな本が登場します。ほぼ日替わり、何が飛び出すか、乞うご期待!
皆さんが読んだ本、良かった本、面白かった本も、私たちに教えて下さい。
お便りはrecommend@books.rakuten.co.jpまで



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