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| 2003/4/7 |
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『愛と永遠の青い空』
著 者:辻仁成 出版社:幻冬舎
発行日:2002年12月 本体価格:1,400円
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「愛は永遠ではないからこそ、輝いている」。限りがあるからこそ、永遠を求めて努力し、それでこそ何か得がたいものが生まれるのでしょう。『愛と永遠の青い空』というタイトルと著者名「辻仁成」のイメージからすると、もっとねっとりした、女と男の心の中を描いたものかと思ったのですが、意外に静かな物語でした。
なぜ「静か」かというと、まず、主人公の周作が75歳。もちろん年齢だけで判断するのではありませんが、人生の終盤を意識し、過去の人生を振り返って心にひっかかるものを精算しようという意識が周作にはあります。妻の小枝(さえ)を3年前に亡くし、小枝に十分なことをしてやれたかどうか、それも心の多くを占めていることです。
なんだかこう書くと、ずいぶん後向きに思えてしまいますが、でもやっぱり、振り返ることもあるんじゃないかと、私がその歳になるのはまだまだ先のことながら、そんな気はします。特に周作の目の前に、もう小枝はいないから。自分と一緒にいて幸せだったのか、浮気を疑っていたあのとき小枝は本当はどう思っていたのか、いろんな聞きたいことがあっても、もう確かめようがないのです。「もしかしたら可能性があるかも」ではなく、可能性はゼロなのです。目の前の扉はぴしゃっと閉まっている、「絶望」なのです。
それでも、ふと見付けた小枝の日記のページを周作はたどっていき、小枝の心の中をのぞきます。周作は周作で、無骨で頑固で、やさしい言葉をかけなかったけれど、小枝も、口にするよりももっと、周作のことを好きだったのでした。壊れていく直前まで。「だって私は周作のことが好きだから」。そんな言葉を、いつの日かその日記を読むであろう周作にあてて書いた日記でした。素直な恋心を綴った小枝の文章には、どれも引き込まれ、繰り返ししみじみと読み入ってしまいました。
お互いにもっと心の中を語ればよかったのにと単純に思いますが、果たして、それで「分かり合う」ことってできるのでしょうか。いくら言葉にしても言葉にし足りず、近づけているようで全然近づけないような、もどかしさも感じるでしょう。でもそれでも「分かり合う」ことを求めて努力するからこそ、愛情が深まるものなのでしょう。命が有限であることもそうですが、人との関係、特に愛する大切な人との関係にいつか終わりが来ることが、いちばん受け入れたくないことであり、もしも「永遠」が一つだけ手に入るなら、私はそれに与えたい気がします。
…と、かっこつけて結んでみたあと、思い直しました。いや、きっと、「永遠」を手に入れたと思った瞬間から、安心して朽ち始めるのですね。「有限でこその輝き」という言葉の意味を、改めて考え直しました。 |
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【楽天スタッフ 笑】 |
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