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| 2003/2/7 |
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『黄色い目の魚(さかな)』
著 者:佐藤多佳子 出版社:新潮社
発行日:2002年10月 本体価格:1,500円
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いい本はいつなんどき読んだっていいものなんだけど、今朝は通勤電車を降りるのと最後のページをぱたりと閉じるのがほぼ同タイミング。こういう本で一日が始められるのってすごく素敵なことです。すっと前を向いて背筋を伸ばして一日を始められた気がします。無茶苦茶心に染みました。
まっすぐな気持ち、自分の居場所探し、恋心。
そういう単語を並べて思春期のフクザツな心持ちを表現するのは簡単な事です。でもそういう言葉から出来上がってしまった物語や人物ってのはあざとい匂いがプンプンするものなのですよ。佐藤多佳子さんはそんなキーワードを使いません(もしかして使ってるかもしれないけれど、私は気づきませんでした)主人公のみのりと、悟が見せる表情と、相手の中に見つける感情が一本一本線になっていて、全体を読み終わった時に立体感のあるカタチになって読み手に届いてきてくれます。そうそうちょうど、輪郭を書かずに線と陰影だけで出来上がってくるりんごのデッサンみたいなものです。
自分の人生に重ねてみようとすると、16歳って時はちょっとばかり通り過ぎてから距離のある時代になってしまいました。あの頃読んで抱いたであろう感想と、今思っている事が、同じなのか違うのかにはとても興味があります。実は読んでいる途中何度も何度も目頭が熱くなりました。別に親子ものの感動劇とか、動物ものの感動劇とか、生き死にの問題とかがあったわけじゃなく、ささやかなフレーズがダイレクトに涙腺を刺激してくるのです。(正直言って電車で読んでいるとほんとにこれは参った…だって泣けそうなところの予測がつかないんだもの)そんな事を通じて考えると、遠い昔に忘れてきてしまったと思っていた感情や感性が、ちゃんと自分の中にあったんだ…とちょっとほっとさせられました。こんな事を書くのも照れくさいけどね。
みのりと悟は絵を通してお互いの存在を確認しあいます。周囲の人のシニカルな似顔絵を描くのが趣味だった悟は、ほんとうのみのりの顔を描きたいと思うようになって、みのりは絵を描く悟を見ていたいと思うようになってきます。それはちょっと恋愛とは違う感情だったのだけど、ほんとうの相手を描きたいという思いが、オモテに見えてこなかった魅力を引き出し、どんどんどんどんかけがいのない存在になっていく…人を好きになるってこういうことなんだよね、と今さらながらしみじみ感じてしまいました。いやーいいなぁ〜
まわりとは上手くとけあえないみのりは変わった存在。その孤独さはいやというほど感じながらも、潔いほどに真っ直ぐに生きていきます。とにかく格好いい女の子なんです。彼女には元気を分け与えてもらいました、さてとまた頑張ろうっと。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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