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読書日記 2004年3月31日更新
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2003/2/5
『第三の時効』

著 者:横山秀夫
出版社:集英社
発行日:2003年02月
本体価格:1,700円
やっぱり横山秀夫はすごい、と思ってしまうのです。「泣ける」事が必要以上に強調されてしまった『半落ち』に比べると、より絡み合った伏線の面白さや男たちの骨太っぷりが光ります。泣かすためのあざとさがなかった(いや、前作はみんなが泣ける泣ける言うから構えちゃっただけだったかも…)ところも好感が持てました。綺麗なフォームで適度な距離をとって助走していって、ジャンプして着地。その一連の流れが美しいほどにスムーズです。そして着地後も観客に余韻に浸る時間を与えてくれるから、だからやっぱり横山秀夫はすごい!何度も唸らされました。

【沈黙のアリバイ】【囚人のジレンマ】【密室の抜け穴】【ペルソナの微笑】【モノクロームの反転】+表題作【第三の時効】が収録された短編集です。登場人物は全てF県警捜査一課の強行犯係。この係、内部は3つの班に分かれているのだけれど、朽木・楠見・村瀬というこの3班を仕切るそれぞれの刑事は一筋縄ではいかない強者揃い。100%近い検挙率を誇っているというのだから上司だってなかなか口を出せやしません。ところが、3班はそれぞれ敵愾心をむき出しに検挙競争をするのです。もちろん聞き込みだって他の班に負けるわけにはいきません、割の良さそうな事件(早く解決できそうなもの)を取り合ったりもします。

厳しさ、天才的なひらめき、恐くなるほどの巧妙な罠。犯罪者との駆け引きや署内での駆け引き。人間離れしすぎな感もある主人公たちが、一瞬見せる人としての温かさが余計心に染みます。主要登場人物が、この小説をつくるためにこの場に集まってきたという雰囲気がないのがまた魅力です。人それぞれの深い人間模様が垣間見えるため、実際にどこかで生活している捜査員たちの“ある日常”や“ある事件簿”を切り取ったという感があります。もしこれが感じられなかったら、全く感情移入できないスーパー捜査員たちの薄っぺらな物語になってしまったことでしょう。

デビュー以来変わらず警察小説を書き続けてきている横山さんですので「そろそろ新境地を切り開いた方が良いのでは…」という思いがないわけではありません。(読者としても書店員としても、です)新作が警察小説だと聞いた時は正直かなり「またか…」の思いがありました。でも、読了してみると「そんな贅沢言いませんから、出来るだけ早く新作を読ませてください、お願いします。」って気分です。
今回はゲラをいただいて一足(ほんの一足)お先に読ませていただいたんですけど、こういう素晴らしい作品を人よりちょっと早く読めたりする特典があるから、この仕事を辞められないんですよね。とにかく、この作品が今年はミステリランキングのどの程度にくい込んでくるのかそれも楽しみでなりません。
【楽天ブックススタッフ 瑞】


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