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| 2003/2/24 |
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『仲蔵狂乱』
著 者:松井今朝子 出版社:講談社
発行日:1998年03月 本体価格:1,500円
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今回の直木賞候補に挙がっているのを見て、初めて松井今朝子という作家を知りました。時代小説を書く人だ…程度の認識はあったものの、こんなに歌舞伎の世界をイキイキと魅せてくれる人だとは思っておらず、今回初めて作品を読んでみてその世界に魅了されています。
この『仲蔵狂乱』とミステリーの色を濃く持つ『非道、行ずべからず』の2本を立て続けに読みました。『非道…』も面白かったんですけれど、中村仲蔵の波乱の人生を描いた『仲蔵狂乱』は見事なものでした。賢明さというか、男気っていうか、単語にしてみるとやたら薄っぺらくなってしまうのですが、真っ直ぐに自分の道を歩んでいく仲蔵の姿に心打たれました。私の大好きな作品『始祖鳥記』に近いものを感じます。
仲蔵はそもそもが孤児でした、しかしながら持ち前の愛嬌から周囲の人に愛され、養母のおしゅんに芸をしごかれながら実子同然に育てられます。厳しい踊りの稽古の末、人気子役となった仲蔵ですが贔屓の大富豪に引き取られたあたりから彼の人生は狂い出します。やはり歌舞伎の水からは離れられなかったのです。歌舞伎の世界に舞い戻った仲蔵ですが、離れている日々の間に彼を覚えているものは少なくなり、血縁の薄さもあって最下層からのスタートの憂き目を見るのです。それは血を吐くような辛い日々の始まりでした。にこっと笑っていれば飯を食えるという日々は去り、彼も変わります。芸を磨き、観客の前に全く新しい解釈による人物像を作り上げた時、仲蔵という役者が花開きました…
途中、堪え忍ぶ苦労物語を想像しますが雰囲気は静謐そのものです。めらめらと燃えさかる炎ではなくて、芸の道を究めようと心の静かな戦いをする蒼い炎。世の辛苦や幸せを全て芸の肥やしにしていく仲蔵は、どんなことがあっても憎しみに心をふさぐことなく最期までお人好しの人情家でした。歌舞伎と聞くと敷居の高さが気になってなかなか足を向ける気にならないのですが、こういう話を読んでみると彼が工夫した芸がどこでどう生きているのかってことを実際に確かめてみたくなります。あ、知らなかったんですけどこれってドラマ化されているんですね。なんと仲蔵は今をときめく市川新之助&市川團十郎。これも見たいなぁ… |
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