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| 2003/2/12 |
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『街の灯』
著 者:北村薫 出版社:文藝春秋
発行日:2003年01月 本体価格:1,762円
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久しぶりの北村薫さんの小説です。インタビューなどを読むたび「書くことよりも読むことの方が…」なんて文章が目に付くことが多くて、密かに心を痛めておりました。待ちに待って触れられた北村ワールドだけに、読みながらとろけそうになりました。せめて半年に一度くらいづつはこんな思いがしたいものです。お願いしますね北村先生。実は、この本格ミステリマスターズってのにはちょいと不満があったのです。シリーズを通じて、同じデザインの装丁で本が出されているのですが「そもそも、本の装丁って内容ごとに違う顔を付けるべきじゃない?」ということ。ま、でも、新作を読めるのならばなんでもいいです。ほんとに。
北村薫さんの作品では、何よりも主人公の凛とした姿に心惹かれます。この物語の語り手をつとめる英子は聡明な令嬢ですが、育ちの良さのせいかちょっと今までのひとたちとタイプが違うのです。それが最初の違和感。お嬢さまが「ごきげんよう」と挨拶をかわす優雅な(そして時には呑気な)やりとりでつくられているふんわりした世界の中に、ベッキーさんこと別宮という女性運転手があらわれます。この人が秀逸!凛として颯爽として、女の私も惚れてしまいそうな人物です。クルマの運転は上手いし、剣の腕も達者だし、人間も立派だし、頭脳明晰で語学もどうやら堪能。挙げ句の果てに拳銃の早撃ちなんて技ももってるみたい…いやはや。
ベッキーさんは車の運転をするばかりではありません、さりげなく英子の人生をも導いていくのです。彼女が現れてから英子の考え方は変わったし、逆にどうやらベッキーさんのほうも何らかの影響を受けているようです。この2人の人間関係にも見られるように、どちらかに探偵役がふられているわけではないのです。(一応は英子が探偵役なんだろうけど…)お互いが時に寄り添いつつ、でもきっちりと自分の目と頭と言葉で答えを出す。そんな関係がとてつもなく心地良いものに思えてくるのです。良質なミステリであることは太鼓判を押しますが、それ以上に良質な成長小説として読めました。
ここまで惚れ込んだ作家の文章の感想はなかなか言葉にできません。申し訳ないです。巻末に北村薫論が載っています。これを読んでいると、自分が漠然と感じていてカタチに出来なかった思いが理屈として目の前に並べられていて、とてもすっきりした気分になりました。私たちの前で語られた3編の物語はほんの導入部分です。そうそう、一番嬉しかったのは次回予告があったことだったかもしれませんね。あー続きが待ち遠しい! |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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