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| 2003/2/10 |
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『カメラマンと犬』
著 者:新井満 出版社:集英社
発行日:2002年05月 本体価格:1,800円
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ラッシー、パトラッシュ、ヨーゼフ、ハチ公にチョビ。物語に登場する犬はどうして大型犬ばかりなんだろう?
そんな私の問いかけに、友人曰く「やっぱり大きな犬のほうが頼りがいがあるし、守ってくれそうだからじゃないですか」・・なるほど。確かに今、巷を賑わせているくぅちゃんを思えば、あのウルウルっとした瞳に見つめられると、逆にこっちが借金をしてまでも守ってあげたくなってしまいます。
ここで、この小説のキャスティングをご紹介します。カメラマン:柊真一郎 バツイチ 息子ひとり。犬:ハナコ ミニチュアダックスフント 3歳。小型犬が物語の主役を飾る時代の到来です。
「カメラマンと犬」このタイトルから想像するに――柊はドキュメンタリーを専門に撮影するカメラマン。危険な現場にも果敢に挑み、多くのスクープ写真を収めてきた。そしてそんな彼の親愛なるパートナーはミニチュアダックスフントのハナコ。ある日、ハナコはファインダーを覗く柊をかばい、銃弾に倒れるのであった――などというストーリー展開を期待してはいけません。ハナコはご主人様を守ったりしないのです。だって小型犬ですもの。
作者のあとがきに、この小説をみごとに表現しているエピソードが紹介されています。
「ある日、知人が電話をかけてきて、『今度の?カメラマンと犬?ってさ、いったいどんな小説?』とたずねるので、私はこうこたえた。『要するに、カメラマンと犬の話ですよ』すると知人は『それってすごくわかりやすい小説なんだね』と言って笑った」
そうなんです。犬の登場する物語にありがちなお涙ちょうだいのシーンや筆者が勝手に想像した前述のようなドラマチックな結末はございません。一人のカメラマンと一匹の犬のごく普通の日常が淡々と過ぎていきます。まるでふたりのプライベートを覗き見しているような錯覚に陥り、ちょっと恥ずかしくなってしまいます。もはやふたりはただの?カメラマンと犬?の関係ではなく、れっきとした?オトコとオンナ?なのです。
美しい日本語を巧みに操るハナコ嬢は「柊さん。今夜あなたは女の人と一緒だったでしょう。わたしの知らない女の人の匂いが柊さんの身体から匂ってきます」などと人間の女性顔負けの嗅覚(さすが犬ですね)で追求したり。そんなハナコのことを「まず、わがまま。次に、淋しがりやで、かなり嫉妬ぶかい。つねに注目されていないと、怒る。つねに愛されていないと、泣く。おまけに、自分が世界の中心にいると思いこんでいるふしがある。プライドが高過ぎて辟易する」と冷静に分析する柊。そういいながらも、いびきをかきながら眠っているハナコの姿を優しく見守っていたりするのです。愛ですね〜愛。。
カバー折り返しには、ミニチュアダックスフントを抱く作者・新井満氏の写真が載っています。ハナコのモデルは作者の愛犬・月子なのです。実は表紙を飾っているのも月子嬢。なかなかの美人です。満氏もきっと常日頃から愛犬とこんな会話を交わし、こんな関係を築いているのでしょう。カメラマンと犬=柊とハナコ=満氏と月子の描写がとても微笑ましい。ここに描かれている生活がちょっぴり、いやかなり羨ましくなりました。う〜ん、私も犬と暮らしたい!「今度のボーナスまで待ちな・・さい」・・ハイ。 |
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【楽天ブックススタッフ 由】 |
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