| <<前日の日記へ | 翌日の日記へ>> |
| 2003/12/5 |
 |
『地下のベルリン』
著 者:河合純枝 出版社:文藝春秋
発行日:1998年08月 本体価格:3,238円
|
ナチス時代、東西分断の冷戦時代、そして東西統一時代…と複雑な歴史を持つベルリン。そんな街の地下に今でも残る無数の地下施設。そこに、一人の日本人女性が憑かれたように降りていきました。そのルポタージュが本書です。ベルリンの地下に残されているのは、地下壕、核シェルター、軍需工場、極秘資料室、拷問室、逃亡トンネル、スパイトンネル…(と、何だか落合信彦の小説を読んでるような…笑)。もちろん、ビール工場、下水道、クラブ(テクノの有名バコTresorのレポ有り!)など、今でも日常的に使われている古い地下もあります。そして古い地下だけではなく、そんな歴史の移り変わりの結果、新しく作られた地下もあるのです。
本書によると、ヒトラーが独裁体制を確立した1933年、ナチスを信奉する学生達が「非ドイツ的」とみなした本に火をつける、という事件が各地で起こりました。その「非ドイツ的」とみなされた作家達というのが、ケストナー、ブレヒト、ツヴァイク、レマルク、フロイト、ヘミングウェイ、ジェイムス・ジョイス、H・G・ウエルズ、カール・マルクスなど(凄いメンツ…)。そしてベルリンのフンボルト大学前の広場で、ナチス宣伝相ゲッペルスが「堕落作家24人」の名を読み上げ、その作品を燃やしました。その24人のうち、ケストナーだけがその現場にいて自分の本が燃えるのを見ていたといいます。そしてそれから60年後の1993年、ベルリン市は焚書の地に記念碑を設立することを決定。コンペで選ばれたイスラエル人アーティストの作品が、そのフンボルト大学前の広場に設立されました。それは、石畳の美しい広場の地下に作られた、本の一冊も入っていない真っ白な「図書館」でした。
話は飛びますが、今年の夏私は2ヶ月ほどベルリンに滞在しておりました。ある夜、友人宅から車で帰る途中のこと。「見せたいものがある」と突然運転していたドイツ人が車を止め、何だかよくわからないままウンターデンリンデン通りの真ん中で車を降りたことがあります。そして連れて行かれたのが、前述の、地下に埋まった空っぽの真っ白な「図書館」でした。その地上面はガラス張りになっていて地下を覗けるようになっており、中では電気が煌々と灯されていました。夜だったため、電気の光が真っ白の空間を眩しいほど強調し、まるで「図書館」がぼおっと光りながら闇の中に浮かび上がってくるような、そんな幻想的な光景を呈していました。この「図書館」について、言葉が通じないながらも片言の英語でいろいろな説明してくれた彼ら(ドイツ人)。彼らの説明を100%理解したわけではなかったのですが、それでも彼らがこの地下の「図書館」を心から誇りに思っていることだけは、深く理解できました。彼らが誇れるものを持ち、それを言葉の通じない外国人に伝えようとする、その素直なオープンさが眩しかったですねえ。
その日は朝方になってようやく家に着いたのですが、そのうちの一人が「大好きな映画があるから観よう」と言い出し、ビデオを見ることに。「銃で撃たれたヤクザの腹からヌードルが出るんだ!」と、彼は観る前から大騒ぎ。もしや…?と思いつつ観始めると、嗚呼やっぱり!それは三池崇史監督の名作『デッド・オア・アライヴ』ドイツ語吹き替え版!!哀川翔と竹内力がドイツ語をしゃべってました(笑)。あまりにあんまりな映像と展開に、もう一人のドイツ人が苦笑いしながら「君はこの映画が好きなの?」。私は日本人としての誇りを持って、「シュア!アイラヴ!」と答えたのは言うまでもありません。 |
|
【楽天ブックススタッフ 寺】 |
|