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| 2003/1/28 |
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『緋友禅』
著 者:北森鴻 出版社:文藝春秋
発行日:2003年01月 本体価格:1,476円
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「また、北森鴻か!」という常連読者の突っ込みが聞こえてきそうです。が、出たばっかりの新刊なので早速読んで早速書かせていただきました。実は本が手元に届いたのが昨日だったんですけど、昨夜の酒量をセーブしてまで必死で読みました。珠玉の短編集(と、言うと何となくイメージが合わないなぁ)。一気に読んでしまったので、今になって「もうめくるページがない…」と一抹の寂しさにとらわれています。
今回の主人公は冬狐堂こと宇佐見陶子。骨董の世界に生きる女性の旗師です。長編では過去何度も登場しているので、詳しくは『狐罠』『狐闇』をお読みください。そもそもの北森鴻さんの作品との出逢いが『狐罠』だったので、とても読者として思い入れのあるシリーズです。今回は文藝春秋からの出版になっているのですが、文藝春秋の本独特の活字が骨董業界を舞台にした物語によくマッチして目に良く馴染みました。
今までこのシリーズは長編ばかりだったので、骨董を取り巻く背景や歴史蘊蓄がじっくり語られて、読者にとってもわかりやすい作品になっていました。それが短編じゃあちょっとわかりにくくなっちゃうんじゃないか?というのがひとつの危惧でした。そころがそんなことは全くの杞憂。冒頭部分から古美術の怪しい世界にいきなり引き込まれ、陶子と一緒になって謎解きをして、真贋の目を養うようなそんな気持ちになります。今回の陶子さんはまず、萩焼の秘密に突き当たり、埴輪に隠された秘密を暴きます。それから緋友禅の技法を知って、円空仏に託された過去を告発する…そんな感じ。彼女の親友の硝子があきれながらに呟くように、まぁよく事件に巻き込まれるものです。でもこれがシリーズものの主人公の宿命ですな。
短編故か登場人物が限られた分、陶子対犯人という構造がよりくっきりと浮かび上がってきました。冬の狐という名の通り、孤高のイメージがつきまとう陶子ですが、亡くなった方に接した時はふと涙を浮かべてしまう。そんな優しさが感じられるところが好きです。だからやっぱり、たまには誰かの胸の中でゆったりと休ませてあげたいのですが、どうもなかなかそうはなってくれませんね。あ、あとちょっと残念だったのが、北森先生特有の食べ物描写がなかったところです。ま、それを読んでお腹が空くことはあってもお腹がいっぱいになることはないので、それはそれでよしとしましょう。人も骨董もミステリーだらけ。堪能させていただきました。 |
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