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| 2002/9/20 |
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『コンビニ・ララバイ』
著 者:池永陽 出版社:集英社
発行日:2002年06月 本体価格:1,600円
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前作『ひらひら』を読んだ時に、主人公のだらしなさに対して怒りっぱなしだった私ですが、今回は泣きました。いやほんと良かった。ここの欄ではおなじみ(?)の集英社のAさんが「浅田次郎と重松清を足して割らないって言われてるらしいよ。」とおっしゃった時には正直「うっそ〜また大げさなぁ〜」と疑心暗鬼だったんです。すみません、反省します。
いうまでもなく、コンビニを舞台に人々が集い行き交う物語です。全てに機械化とシステム化が進んで人情とはほど遠くなった感のあるコンビニで人情を描くという試みが面白いところです。でもそうはいっても個人営業のコンビニで24時間営業すらしていない。これが某大手コンビニチェーンだったらこの密やかなきらめきは出ないでしょう。そして、よくありがちな場末のスナックなんかが舞台だったらじめじめしすぎます。「賑やかだけど、乾いている」いい表現だと思いました。上手いなぁ。
単純なハッピーエンドドラマではないところが、自分の生活の隣に息づく時間を感じさせてくれます。「やっぱり人生って綺麗事だけじゃないし、かといって悪いことだけでもないんだよね。」と、ちょっと自分を振り返ってみたり…終盤に向かってご都合主義めいたところが増えてくるので、好き嫌いが分かれるかもしれません。でも私はこういうの好きです。いろんな人がいろんな事情を抱えていて、それがコンビニという舞台で交差して変化する。あるわけなさそうなシチュエーションだけど、想像したら何となく楽しい。だからこそ小説が必要なんです。
でも、やっぱりヤクザの話はちょっと蛇足だったかなと思っています。(蛇足といっても冒頭から出てくるけど)彼らの陰を描くだけで何となく全体に陰鬱感が出せちゃうんですけれど、ここまで書かなくても良かったんではないかなあとどうしてもその筆の熱さを不自然に感じてしまいました。そうはいってもいわゆる「泣ける!」ものを書こうとした時に、お決まりの不幸を書かずに涙を呼ぶのって難しそうですね。それだけがちょっと気になりましたが、これだけしみじみいい気分を味わえたので、個人的にはかなり満足。人にも自信をもってオススメしたい作品です。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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