小さい頃、「周りの人は実は人間じゃなくて、自分が見ていないところで皮を脱いで宇宙人やらバケモノになっているのでは?」という妄想にとりつかれたことってありませんか?私はよくそういった妄想にとりつかれていた子どもでした。
そんな妄想&恐怖が現実に・・・といったホラー小説です。舞台は九州の水郷・柳川をモデルにした運河の町。そこで何日か失踪した人間がひょこっと帰ってくるといった奇妙なことが次々起こります。本人にはその間の記憶がありません。外見はまったく変わらないのですが・・・。
〈ここから先、ネタバレを含みます。未読の方はご注意下さい〉
ストーリー展開そのものには、さほど衝撃はうけなかったのですが、登場人物のキャラクターがなかなか良くて、私にとってはストーリーよりも人物観察のが面白かったです。主人公の「多聞さん」は、子供の頃自分の影に逃げられるという超常体験をしていて、圧倒的な孤独と恐怖を味わったことがあるという設定。そういう気の利いた体験を主人公に語らせる作者のセンスがいいですねぇ。ただその「多聞さん」が飄々と現実を受け入れて、あんまり怖がらないので読者の私としてもさほど恐怖は感じませんでした。でも実際、周りがどんどん人間以外のモノになっていったら・・・だいぶ怖いですよねぇ。
そして、その恐怖のパニックがとりあえず落ち着いたとき・・・どういう行動をとるでしょうか?
周りと自分が違うことに耐えかねて、人間捨てますか?
それとも最後まで人間でいますか?
その前に自分がまだ人間であるという自信をもてますか?
ちょっと考えさせられるお話です。 |