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| 2002/6/25 |
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『鳶がクルリと』
著 者:ヒキタクニオ 出版社:新潮社
発行日:2002年01月 本体価格:1,700円
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先日、茶木則雄さんとご一緒したときに「面白い本ありませんか?」と伺ったところ、返ってきたのが「ヒキタクニオが面白い、ブレイクしそう…。」というお答でした。あんまりメジャーじゃない作家が評価されているのを聞くと読まずにはいられないワタクシ、バイオレンスな色の強そうな『凶気の桜』は敬遠して、娯楽小説との呼び声高い『鳶がクルリと』をさっそく読んでみることに。
“ヒキタクニオ”の作品について語られたその場(飲み会)での話を聞く限り、ちょっと説教臭い作家なのかしら?という印象を持ったのですが、そんな懸念を一気に吹き飛ばしてくれる面白さがありました。
主人公は貴奈子という30間近の女性。超大手企業の総合職としてバリバリ働いていたものの、上司がふともらした生活設計の危なげなさと堅実さに魂を抜かれ突然辞表を提出して、プー太郎生活に突入します。彼女の両親はあまりにだらけきった生活を心配して「有限会社日本晴れ」という彼女の叔父の会社(鳶職人の集合体)に再就職を薦めました。最初は断るつもりで会社に出向いた貴奈子でしたが、世間とちょっとずれた彼らの魅力と職人芸に魅せられて行くのです。
鳶頭である叔父の勇介を筆頭に、アメリカに戦争を仕掛けようと戦略を練りつづける雷太・風太の双子、基準はすべて高校の偏差値という剛、ご隠居、生まれながらの鳶職人(でもかなり生意気な女の子)ツミ+その父親悦治。と彼らの会話を聞いているだけでも賑やかなものです。普通の会社組織とはかけ離れたところにあるプライドに、貴奈子はとまどいを覚えぶつかったりもするわけですが、彼らの命がけの仕事に触れるうちにお互いを認めあっていきます。ツミとの距離が縮まっていくところは特によかったなぁ〜
手に職を持っているとかそんな安っぽい言葉では表せなくて、彼らは細胞のひとつひとつまで鳶なんです。瞼に華麗な仕事を見つつ、手に汗握りながら読みました。思想的な発言が見られることで抵抗を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、あまり難しいことを考えずに楽しんで読むのがいいでしょう。
すご腕の仕事人たちはちょっとお茶目でもあります、「梅雨払い」と称して吉原に赴き腰を抜かして病院に運ばれたなんて、思わず笑ってしまうような事もやってくれます。そんな人間くささもたまりません。粋でいなせな江戸っ子ってこういう人たちの事なんですね。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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