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| 2002/6/17 |
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『イン・ザ・プール』
著 者:奥田英朗 出版社:文藝春秋
発行日:2002年05月 本体価格:1,238円
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奥田英朗さんの作品といったら、平凡な(平凡すぎるくらい平凡な)日常があるきっかけで綻び、歪み始める。というところに面白さがあります。だからこそ怖かったり身に染みたりするのでしょう。『イン・ザ・プール』は奥田さんの新作で、初の文藝春秋からの出版になりました。
あまり先入観を持たずに読み始めたところ、いつもとは何となく毛色が違う…そう、文章が始まったと同時になんだか歪みがあるのです。原因不明の症状に悩む編集者が“心身症”と診断され、行った先の精神科で突如現れる精神科医の伊良部氏。読んでいくとわかるのですが、このヒト典型的なオタクタイプで注射フェチ(なんだそりゃ)+マザコンと来ています。こんな感じの医者ですから治療方法も推して知るべし。心身症に悩む彼は運動を薦められ、水泳に目覚め今度は水泳中毒になっちゃったり(伊良部先生も一緒にプールに通ってはまりこんでました)、ケータイ中毒の患者を診たときは中毒患者に負けじとケータイを持ち、毎日百通ものメールを送りつけたり…
とにかく無茶苦茶。そんないい加減な発言が多いのに、毎日注射だけされて(それも看護婦が露出狂と来たもんだ)患者だって不安になります。でも、気がつくと(物語の終盤には)患者は快方に向かうのです。実は彼の発言は神経症治療的には正しいことなのでしょう。でももしかして、ひそかな名医かも!とは微塵ほども思いませんでした。だってやっぱり変人なんだもの。
「現代人を蝕む精神の病」と書くと何となく苦悩の色が見えて格好いいけど、そういう病気だと信じ込むそのことが心に鎧をつけさせているのかもしれません。伊良部先生の無邪気なほどの馬鹿っぷりを見ていると、患者だけでなく読み手までもが適度にいい加減な気持ちに包まれてくるところがたまりません。非日常があるきっかけで日常へと戻っていくいつもと逆パターンの構成と、ココロの病についての奇天烈なアプローチ方法を楽しませて貰いました。いつも肩肘をはって生きているなぁと思ったときには読んでみてください。どうでもよくなりますから。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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