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| 2002/5/7 |
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『妻と私(わたし)』
著 者:江藤淳 出版社:文藝春秋
発行日:1999年07月 本体価格:1,000円
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誕生月というのは、それだけでなんとなく楽しいような、自分のための月、という気分になります。1つの区切りとして1年を振り返ってみると、辛いときに支えてくれた人がいたり、楽しい時間を一緒に過ごした人がいたり、そういう人達に感謝だなぁと、神妙な気持ちになります。それも悪くないです。
そんな気持ちで本を探しているときにふとこの本を見つけました。以前、その感謝すべき人の一人からすすめられたことがあり、今読むのにちょうどよさそうな気がして、手に取ってみました。
江藤淳さんの自殺は、当時ニュースで耳にした記憶があります。夫人を亡くし、手記を発表し、その後、自らも死を選んだと、断片的にしか知りませんでしたが、その手記を実際に読んでみると、夫人への深い思いが胸にせまってきました。
淡々とも言えるような筆致で、夫人の余命が短いことを知ってから亡くなるまでのことが記されています。ご自身は、こうして書くことで心の中にたまったものが吐き出せたのでしょうか。書かないではいられなかった重苦しい気持ちは、でも、他人にははかり知ることのできないものでしょう。40年余りも一緒に過ごした人を失うとは、いったいどういうことなのでしょうか。「私たちは、ただ一緒にいた。一緒にいることが、何よりも大切なのであった」。死を前にこんなふうに慈しみ合える大切な人を失った喪失感がどれほどか、とても想像の及ぶものではありません。
そんな悲しい場面を迎えたくないのはもちろんですが、せめて生きている間に、愛する人、大切な人と、濃い時間を過ごしたいものだと思うのでした。月並みな結びで恐縮ですが、正直、内容の重さに、軽々しいことは書けないという気持ちにさせられます。「生と死の深淵を見据えた感動的作品」という帯の文句が妙に浮いて感じられたほどでした。なお、文庫版には、絶筆となった「幼年時代」、3氏の追悼文、年譜が収められています。 |
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【楽天スタッフ 笑】 |
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