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| 2002/5/30 |
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『りんごは赤じゃない 正しいプライドの育て方』
著 者:山本美芽 出版社:新潮社
発行日:2002年05月 本体価格:1,300円
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教育に関する本を読んで久しぶりに感動しました。この本は太田恵美子さんという美術教師のお話で、この人の教育方針が全編にわたって書かれています。この先生というのが「美術コンクールを総なめにした公立中学のカリスマ教師」(帯キャッチより)だそうで、受験と関係がなくもっとも生徒が授業に打ち込みにくい美術という教科を通じて、いかに人を育てたかという教育法が書かれています。
こうさらっと書くと、嫌味な感じがしませんか?実はオビを読んだだけでは私も「なんだーカリスマ教師の自慢話か〜」と非常にネガティブな印象を持っていたのです。それは導入部分を読んでもかわりません。彼女の教育法というのはこれといってかわったことをやっているのではなく、とにかくきちんと褒めること。プライドを育てること、授業に真摯に向かわせることの徹底です。シンプルなだけに上っ面だけを真似することは簡単そうですが、背景にある彼女の威厳と、威厳や信頼感を得るための努力は相当のものです。読み手の方は、これがあるから生徒に受けいられることが出来るんだと次第に次第に納得させられていくのです。
中学校教師というのは一番難しい時期の子どもを預かる職業です。思春期まっただなかの上、今も昔も吹き荒れる暴力の嵐などで集中して勉強に取り組める環境維持は極めて困難そうです。太田先生がいた学校もそういった普通の学校ですから、荒れている生徒もいるし不登校気味の生徒もいます。彼女はそういった生徒も分け隔てなく徹底的に褒めます。こんなことも褒めるのか!?と驚くようなことまで見つけだし褒めてあげるのです。姿は大きくても子どもは子ども、その褒め言葉を糧に頑張ることが出来るという非常に良い循環が見られました。「しつけは家庭の役割だ」と、良く言われますし私もそう思っています。でも、太田先生と生徒のふれあいを見ていると学校だってもっと出来ることはあるはずでは…と意見をかえざるを得ません。
一方私生活では離婚を経験していたり、他の先生との軋轢に悩んだり…となかなかの苦労人です。どんな「ワル」の生徒も絶対良いところがある、かわるはず、という信念を持っている先生ですが、旦那様の行状には我慢が出来かねたというところは同情しつつ苦笑してしまいました。ただ一点“カリスマ教師”という言葉を用いたことが気になりました。確かに太田先生の記録は評価すべきですが、それは美術コンクールを総なめにしたことなどではかるべきだとは思えないし、カリスマという言葉で表現すべきことでもないかなと思うのです。そんな言葉を用いなくても、読み手にはひしひしと彼女の懸命さが伝わってきました。
学校教育が大きな転換期をむかえている今、ほんとうのゆとり教育ってなんなのかということをあらためて考えさせられました。教育書としてでなく、子どもを育てる全ての人に読んで考えてもらいたい1冊です。とにかく裏表紙の折り返しにある生徒の作品を一目見てみてください。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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