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| 2002/5/24 |
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『悪いうさぎ』
著 者:若竹七海 出版社:文藝春秋
発行日:2001年10月 本体価格:1,810円
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ハードボイルドがハードボイルドたる所以は、流される血の量ではなく起こる事件の数で決まるんだな。としみじみと思わされた一作です(いや、でもこれはミステリなんだろうな)。葉村晶シリーズとなっていますが、彼女が出てくる前作『依頼人は死んだ』を未読の私でもどっぷりと楽しんで読むことができました。
葉村晶は女性の探偵、すごいことに冒頭部分からいきなり逆上した事件関係者に刺されて入院です。これをきっかけに、ほんのさわりだけ関わって済むはずだった女子高校生行方不明事件に、いやおうなしに巻き込まれていく羽目になるのです。この行方不明事件がメインの事件になって、そこに様々な人と事件が絡んでいきます。まぁでるわでるわの嫌な奴オンパレード。読んでいる私の表情も苦虫ものだったに違いありません。そんな方々にことごとく目を付けられ、嫌がらせをされたり罠を仕掛けられたりする葉村を見ていると、ふと『フロスト警部』を思い出しました。とはいえあんな下品さとタフさは持ち合わせていませんので、女として悩み・監禁されて暗闇を怖がり・筋肉痛と怪我の痛みをごまかしながら事件現場に赴きます。ここのあたりに共感をおぼえるところがあります。
装丁が可愛らしいものなのでユーモアミステリだと思いきや、ページがすすむほどシビアな展開になってきます。『悪いうさぎ』=羽目をはずしちゃった高校生の女の子。ぐらいにとらえていたらびっくり!思わず吐き気を催すような後味の悪い意味でした。様々な事件が起こっていくその根底に流れるのは人の狂気です。露悪的な結婚詐欺師や、バカな孫を盲目的に信じ周囲を排除しようとする老人、子どもを失ったショックから立ち直れずにいる母親など読むものに次々と嫌悪感を与えて葉村の同情票を集めていくさまは見事でした。葉村晶というひとはどちらかというと根暗に書かれているので、これくらいのことが起こらないと感情移入しきれないかもしれませんね。
そんな、暗さとタフさを併せ持つ小説ですが、最後のオチで極めて人間らしい一面を感じさせられました。それで暗い事件を通り過ぎてきた読み手も救われた気分になったものです。
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