本編とは関係ないのですが、今回はやたらそうめんが食べたくなる小説でした。(『センセイの鞄』の時は湯豆腐でした)
今さら説明するまでもないことながら、この掌編は『センセイの鞄』のサイド・ストーリーです。もとはといえば『センセイの鞄』の一部だったそうなのですが単行本にするにあたりがさっと削ったとのこと。正解だったと思います。これを別の話としてあとから出版してくれたおかげで、私はもう一度元気な頃のセンセイとセンセイへのやわらかな思慕に満ちたツキコさんに会うことが出来ました。感謝(ってのもヘンかなぁ)
そうめんを茹でて食べ、畳のあとがつくくらいぺったりと昼寝をして寝そべりながらお話をするセンセイとツキコさん(ほらほら何となく情景が浮かんできませんか?私の文章じゃ浮かんできませんねー失礼しました。)センセイはふと「昔の話をしてください」と、ツキコさんに語りかけます。そして話しだしはじめた幼い頃のお話。子どもの頃のツキコさんにはちょっと不思議な生き物がついていたのです…
幼い頃の話そのものは川上弘美さんのお得意分野である“謎めいた生き物がたっぷり出てくる”お話です。独特の雰囲気はいつもながらのものなのに、今回ちょっと違った趣を感じたのは、その語り手を身近に感じるからだったのではないかと思っています。『センセイの鞄』を読んだ私の中には、四季折々と生活と食事とお酒を楽しむツキコさんとセンセイは、なんとなく近所に住んでいるような現実感と存在感があるのです。そんな2人が語るからこそ、現実と幻想がごちゃまぜになったえもいわれない空気が出てきます。
物語そのものは非常に短いものなので、短時間で読み終えてしまいます。ちょっともったいないんですけど、読み終わったあとの余韻がいいんですよね。結局川上弘美さんの小説の醍醐味は“間”なのかなぁと思う今日この頃。あと、センセイとツキコさんの関係がどのあたりの時の話なのかはわかりませんが、ふとふれあう2人の体温がお互いへの慈しみに満ちていてとても素敵でした。(意地でも恋愛小説として読もうとしている私…) |