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| 2002/3/7 |
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『九龍(カオルン)に昇る日は』
著 者:高野裕美子 出版社:集英社
発行日:2002年03月 本体価格:1,800円
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この業界に入ってよかったなぁ…と思ったことのひとつにゲラが読めること、ということがあります。今では珍しくなくなったものの、初めてゲラをいただいたときの感激はいまだに覚えています。今回もその時と同じく集英社のAさんが「読んで損はないから!」と送って下さったゲラで読みました。読んで損はないです。
高野裕美子さんの小説は以前『キメラの繭』というのを読んだことがありました。(読書日記にも昨年の2月16日に書いてあります)遺伝子組み替え製品によって狂いはじめた動物たちと異様なインフルエンザの発症のしかたを扱った前作とはがらっと趣を変えて、今回は姉妹の愛憎ドラマになっています。そもそも高野さんという人は翻訳家として活躍をされていた方だそうで『サイレントナイト』にて日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しています。読ませる力と人を惹きつける力をもっている人だなぁと感じながら読んでいました。
主人公は香港でベンチャー企業の経営者として非常なまでの買収劇を繰り広げるナオミと、日本で新興宗教の教祖をしている姉・有希子の2人です。彼女たちには暗い過去があって、32年ぶりに父の白骨遺体が発見されたことで、隠していたはずの過去に引き戻されることになるのです。テロ宣言・脅し・殺人…謎が多くちりばめられているのでミステリと言われるかもしれませんが、謎解きよりもエンタテイメントとして読むほうがきっと楽しめます。核心部分で言葉を減らしているところがあって、ちょっとわかりにくさを感じたのが気になったところです。
しかしながら、少女期の舞台となる場所が私の実家の極めて近所だったので、物語の背景に描かれる自然の姿や景色の確かさに感心させられました。思わず里心がついてしまったほどです。あと、特記しておくべきはナオミの元旦那さまの存在でしょうか。仕事人間になることで心を失っていくナオミに対して無償の愛を注ぎ続ける彼の姿が印象的でした。いや、ただ羨ましかっただけです。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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