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| 2002/3/5 |
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『影法師夢幻』
著 者:米村圭伍 出版社:集英社
発行日:2001年12月 本体価格:1,700円
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装丁を見たり、オビを読んだりする限りかなり堅苦しい時代小説のように受け取られがちですが『退屈姫君伝』の米村圭伍さんの作品ですので良い意味でイメージを裏切ってくれています。「謎が謎を呼んで物語は佳境に向かいます・・」なんて表現を見ているとまったくテレビドラマかラジオドラマ(それもなんとなく教育テレビちっくな)を見ているような感じ。作り話を読んでいるというよりは、手の込んだ法螺ばなし(失礼)を読んでいるようで史実かどうかなど関係なく楽しめます。米村さんの小説を読んでいると(もしかしたら時代考証めちゃくちゃかも)日本史のデキが悪い私もどっぷりとその時代に身をゆだねることが出来るのでした。
大阪城炎上とともに命を落としたはずの豊臣秀頼が、真田幸村の手引きでこっそりと逃げ出したというのが物語の始まり。妖しげなくの一のお才が諸国に広めて歩く手毬唄を聞いた家康は心穏やかでなく、壮大で長ーい時をかけた追いかけっこが繰り広げられるのです。どれくらい長いときかというと・・秀頼が7代目になって、逃亡時の関係者がみんな7代目になって各々の家に伝えられてきた秀頼落ちのびの真相を語るという気の長さ。飄々とした登場人物が時に嘘をつき、時に騙しあいをしつつ絡まり合うのが魅力です。ちなみに濡れ場もあるので山田風太郎のそういう小説が好きなヒトにはちょうどいいかもしれません。
前作の登場人物がわき役として顔を出すところも、ファンにはたまりません。内容の重い小説を読んだあとには一種の清涼剤の役割を果たしてくれるでしょう。話し言葉っぽい文章なので、落語家の語りで聞いてみたいです。物語の中で何度か「何らかの夢をもっているから、今一生懸命生きられるんだ」といったようなセリフが何度も囁かれます。戦乱期にこういった生き延び説がまことしやかに流れたり、徳川埋蔵金は未だに多くの人の心を掴んでいたりと夢って大事なモチベーションなんですね。暗い話題の多い昨今、大がかりなファンタジーがもてはやされるのもわかる気がします。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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