桜が咲き始めて、木の下から蒼い空を見上げていたらどうしようもなく『スキップ』が読みたくなりました。普段一度読み終わった本を手にとることはめったにないのですが、なぜだか私を突き動かすものがあったのです。そういえば、幼い頃からいっさい本(ハードカバー)を買ったことの無かった私が初めて購入した本がこの本でした。そういえば、これを手にとるきっかけになったのは今はもういないあの人でした。ものすごく沢山の思い出が詰まった一冊です。
「昨日という日があったらしい。明日という日があるらしい。だが、私には今がある。」
17歳から突然時を飛び越えて42歳になってしまった真理子がまっすぐな瞳で前を見つめつつ(あくまでイメージです)つぶやくこのセリフに始まって、胸を揺さぶるセリフが多数登場します。北村作品はどれをとっても体を包み込んでくれるような空気をまとっているのですが、この本を読むたび私の時間は高校時代に巻き戻されるのです。文化祭やバレーボール大会、生徒同士の確執や授業などあまりに爽やかで健全な学校像は「現実離れ」しているととらえる人もいるようです。でも確かに私にもああいう時代がありました。思い出に浸っているだけでなんだか涙がとまりません。
17歳の心を持つものにとって、まぶしくうつるのは同年代の男の子です。真理子は高校の教師(それも自分と同年代の)でもあるため、まっすぐで知的な男の子を見てなぜだか胸が熱くなったりもするのです。それはとてもいじましくて切なすぎる想いでした。逆に夫である桜木さんや、高校生の男の子たちにしても突然キラキラ輝きだした真理子がまぶしくて仕方がありません。彼女の変化はいろいろな人を変えていきます。これがまた、いい。
読んでいるあいだほぼ泣きっぱなし、気合いを入れて読書日記を書こうと意気込んでいたものの、書き始めてみるとあまりに胸に詰まった想いが多くて言葉にならないのです。もしもっと文章力があったならみなさんにこの感動を分かってもらえるのにと悔しくてなりません。不安で不安で押しつぶされてしまいそうなとき、凛として前を向くことのできる心強さと人への優しさをもらえます。これが北村薫。これがことばのチカラ。ちょっと元気になりました。 |