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| 2002/3/15 |
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『甘露梅 お針子おとせ吉原春秋』
著 者:宇江佐真理 出版社:光文社
発行日:2001年11月 本体価格:1,500円
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宇江佐真理さんの小説を最近立て続けに読みました。ここには書かなかった『おうねすてぃ』という作品は著者初の明治ロマン。文明開化の時期、英語を習って外に出ていこうとする人たちの強いエネルギーを感じる作品でした。ただ色恋の部分の展開にちょっと不満ありという感じです。(好きずきだと思いますが)
で、今回の作品は得意の江戸時代に舞台を戻し、さまざまな恋模様を描きます。髪結い伊三次のシリーズを読んでいると捕り物のイメージが強いのですが、やっぱりこの人は恋愛ものだなーとあらためてしみじみ。遊郭を舞台に繰り広げられる愛憎と命がけの恋は、軽い読み物として読んでいた私の心にずっしりと響きました。もともと遊郭が舞台なので、男と女の愛憎劇は切り離せないテーマだと思います。でも花魁や遊女たちは商品なわけですから、自由な恋愛は許されない行為。そうはいっても心は誰にも縛ることは出来ない…渦巻くいろいろな気持ちをお針子として住み込んでいる“おとせ”が優しく見つめている物語なのです。
おとせ本人は岡っ引きだった亭主を若くして亡くした後家さんで、息子夫婦に家を譲り仕方なく新吉原に住み込み仕事に出てきたという設定です。騙しあいの多い遊郭には馴染むのが大変だったようですが、持ち前の好奇心と人の良さとやわらかさで、周囲の人の心のほつれをなおしていきます。彼女の中でもいつしか女の部分が目覚めて、恋の渦に巻き込まれていく顛末には目頭が何度か熱くなりました。恋とか愛とか言葉で言ってしまうにはあまりに簡単な単語ですけれど、人を想うって・人と添って生きるって思えばすごいエネルギーです。(『センセイの鞄』に感激した方にはぜひともオススメしたいです。)
正直なところ、個人的にはここのところの宇江佐さんの作品の印象は可もなく不可もなくという評価でした。でも、今回ちょっと吹っ切れたものを感じています。前半岡っ引きの女房の謎解き色が強かった(とはいえ、それほどの洞察力があるわけではない)ため、その部分を省いてもうちょっと人の悲哀をじっくり書いてもらえればより満足できたかも。乙川優三郎さんの作品もそうですが、時代物を読むと季節をしみじみと感じられるところが好きなのです。それだけ目に見える季節の移り変わりが減ってきたのかと淋しく思ったりもしますが、春の到来や夜空の星に感激をおぼえる心は忘れちゃいけないですね。 |
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