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| 2002/2/25 |
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『生きる』
著 者:乙川優三郎 出版社:文藝春秋
発行日:2002年01月 本体価格:1,286円
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武士とは壮絶なものだなぁ・・とつくづく思わされた、乙川優三郎さんの短編時代小説です。3編がおさめられているのですが、表題作の「生きる」の印象が非常に強くて衝撃的でした。3編は連作ではなく、全て登場人物も異なります、しかしながら苦しみを乗りこえる人の姿が共通して読む側の心を揺さぶりました。
日本史を真面目に勉強をしたことがないので(まんが日本の歴史は読んだ)、昔の暮らしを小説で読むと全て真実だと思いこんでいちいち感銘をうけてしまいます。それにしても、昔の人は忠義を示すために主君の死を追うことが多かったのですね。「生きる」のテーマはそこでした。又右衛門という50にさしかかった武士は、藩主の病死を目の前にして追腹の覚悟を決めていました。藩主は人望があったため、同じような覚悟をしている者が多くいます。しかし、そういった一生懸命な忠臣たちを失うということはその後の藩の存続にも関わってくるので家老が追腹を禁じることになりました。
かといっても、自らの忠誠心を示す手段は追腹しかない。という思いこみもあり、若い藩士たちは次々と腹を切ります。又右衛門の娘婿もその1人でした。命をなげることを止められなかった父に対する娘の怒りは凄まじく、絶縁のような状態に至ってしまいます。周囲の藩士たちにも忠誠心のない人間とそしられ、生き恥をさらすようなまま又右衛門は歳を重ねていきます。生きることとは耐えること、でも生きていて良かったという思いになることが必ずあるから…というメッセージを強く感じました。
現代の世の中にも真面目だからバカをみるという辛い風潮があります。そんな辛い思いを抱えているときはよけい身体に染み入る小説です。ちょっと背筋を伸ばしたくなる張りつめた空気がたまりません
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