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| 2002/2/21 |
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『桜姫』
著 者:近藤史恵 出版社:角川書店
発行日:2002年01月 本体価格:1,700円
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オビも内容も見ずに読み始めた本というのは、よりドキドキします。しかも初めて読む作家の本でしたので、そのドキドキもさらに倍増。幸せなことに、非常に読後感の良い小説でした。これから近藤史恵さんの他の作品をもっといろいろ読んでみたいと思っています。
舞台は歌舞伎の世界。あとからいろいろ調べてみると『散りしかたみに』でも探偵役の主要人物はすでに登場済みのようです。こちらは文庫になっていますので、もしかしたらこちらを先に読んだほうが良いかもしれません。前作がある分、探偵役の描き方・紹介の仕方はあっさりしていたようです。今回の主人公は梨園に生まれた女性、笙子です。彼女はさる大物役者の家に生まれたものの、実は愛人の子といわれています。そして彼女の家には本来なら跡取りになるべき存在だった音也という兄がいたのですが、彼は幼くして亡くなっていました。なぜか笙子の心の中には彼を殺した記憶があって、その謎を解き明かそうというのがひとつのミステリ。
少女期から抱えていたその悩みを晴らし、死の真相を暴きたいという若手役者の銀京が現れたときに物語が動き始めます。その同時期に歌舞伎座で子役の死亡事件がおこるのですが、その二つの糸は微妙に絡み合って結末まで一気に進んでいくのでした。
銀京に狂うように惹かれていき恋に堕ちていく笙子は、「この男に壊されるかもしれない」という不安を抱きます。その彼女の心を煽るように、父や周囲の人物たちは銀京に近づく事を禁じるのです。そんなに長くない小説だったので、そのあたりの心の機微がまだまだ描き切れてないのかなという印象を受けましたが、もうちょっと銀京という人を読んでみたかったです。梨園が舞台ということで、出てくる人たちがみんな落ち着いた雰囲気を持っている小説でした。私のようながさつな人間にとっては対極にある世界の話ですが、物語を読んでいるときは非日常の世界で存分に遊べます。これが小説を読むということの醍醐味かもしれません。
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