“ピイナッツのコオヒイカップ”といったような独特の文字遣いが特徴的でした。比喩や表現はなんとなく江國香織さんの小説を読んでいるときのような心持ちがあります。ふわふわ感は好きなのですが、正直コオヒイなどの文字遣いはここにモダンさをゆだねているようで抵抗感があったのです。でも事件が起こって以降はあまり気にならなくなったし、これくらいの雰囲気を作っておかないとあのオチにたどり着かせられなかったかなと思ってみたり。
話そのものは典型的なクローズドサークルものというか、無人島で連続殺人という由緒正しいミステリの王道を行くようなテーマです。要はこれですな。そして著者の近藤史恵さんはここに恋愛という濃い味付けをして、読み手に提供してくれています。喫茶店<北斎屋>の常連客が慰安旅行と称してわいわいと無人島に出かけます。でも、どこかそこに漂う不穏な空気を感じるのです。というのも、喫茶店のオーナーのあやめさんと常連客の鳥呼は数年来の不倫の関係、旅行には鳥呼の奥さんも来ているのです。
着いた島はこれまた訳ありで、以前新興宗教の聖地だった場所で、最終的には集団自殺で終焉を迎えたというこれまたいわくありげなところなのです。(そんなところでそもそもバカンス気分になるんだろうか…)そのうちに悲劇の幕が切って落とされ、血まみれの死体が転がります。お定まりのように密室だし、心臓をえぐりとって持ち去るという猟奇的なスパイスもきいています。ただ、そんな死体出現後も全体に漂うけだるさは変わらないところがポイントです。そう、すでにこの段階からやはり何かおかしかったのですよ。
私の偏った見方かもしれませんが、登場人物たちはみなどこか感情の狂った人だったような気がします。もっとも、狂いでもしなきゃ連続殺人なんて出来やしないんでしょうが…鮎川哲也賞受賞作という評価されたミステリですが、私はどちらかというと恋愛小説として読ませていただきました。でも、近藤史恵さんの描く恋愛ってどうしてこんなに哀しくて痛々しいのでしょうか? |