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| 2002/11/6 |
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『誘拐の果実』
著 者:真保裕一 出版社:集英社
発行日:2002年11月 本体価格:1,900円
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子どものときは、誘拐のニュースを聞く度に「あぁウチは身代金が払えるほどお金がないから、きっと私は殺されちゃう…」と不安に囚われていたことを思い出しました。そのたびに「大丈夫、ウチみたいな貧乏な家の子どもは誘拐されないから。」なんて慰めともつかない慰めをされてましたな。最近みたいに“内臓を売るために子どもを誘拐する”なんて事件が起こっていることを知っていたら、もしかしたら引きこもり幼稚園児になっていたかもしれません。知らないことはたまには良いことです。
この小説のテーマも誘拐です。誘拐されたのは中野区の大病院の院長の孫娘。どれほどの金額を要求するのかと思いきや、犯人グループが要求したのは、その病院の最上階に緊急入院している実業家、永渕の命でした。医師がちょっと意図的な間違いを犯せば犯人の要求は満たされるわけですが、それは殺人に他なりません。同時期に神奈川でも19歳の大学生が誘拐される事件が起きます。待ち望む家族に届けられた生爪(ぎゃー)に周囲はどよめきます。そしてこちらもまた一風変わったものを身代金に要求されるのです…
誘拐ものはとかくゲーム性が目立ちます。が、今回特に読みながら思ったのは、犯人の悪意があまり感じられないということ。そのため犯人と対峙する捜査側という構図よりも、世間体と戦う残された家族や、家族の中の人間関係・親子関係がじっくり書かれているのを感じました。勧善懲悪の物語としては物足りなさがありますが、結末まで読んでみるとその意味がじわじわと染みこんできます。考えてみると、真保裕一さんの小説は“組織的な巨悪と戦う”事が主流で、個人的なすごい悪者って出てきませんね。真保さんの書くものすごい悪者というものもどこかで読んでみたい気がします。
誘拐事件は比較的早く収束し、事件の背景を探ることにテーマが移ってきます。しかしいつまでたっても真犯人の姿は見えてこず、それ以上に真の犯行動機も見えてきません。でもどうやらこの辺に犯行動機がありそうだ…とか、いや、でも、そんなことでわざわざここまでして誘拐事件なんか起こすか?とか自問自答しながら一気に読み切りました。完全に著者の思惑通りの読書をしてしまったのかもしれません。あとはこの模倣犯が出てこないことを祈るばかりですね。 |
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