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| 2002/11/18 |
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『虹の家のアリス』
著 者:加納朋子 出版社:文藝春秋
発行日:2002年10月 本体価格:1,762円
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※今日はちょっと長文になります
先日から盛り上がっている(一部でですが)『ジャンプ』の読書日記に関してharuさんからこんなメールをいただきました。
初めまして。ときどき「読書日記」のコーナーを覗かせていただいてます。
紹介される本は未読のものが殆どなので、何か読もうかなあと思ったときの参考にさせていただいてるのですが、私が読んだことのある本で、私とは違う感想だったのが面白くてつい、メールさせていただいちゃいました。佐藤正午さんの『ジャンプ』、私も読みました。
私は「瑞」さんとは逆で、主人公にも南雲みはるにも共感したクチです。
恋人が急にいなくなった、その事実を前にしても出張に行っちゃうの、私は分かる気がします。何かあったかもしれない、けど、なかったかもしれない。たまたま今はいないだけで、大したことではないのかも。決定的に「何かあった」と分かるような事態だったら彼も出張には行かなかったんじゃないかと思うんです。
どっちだか分からないから考えて迷って思わずいつもと同じ行動をしてしまう・・・みたいな。
失踪五年後に彼が行動に移れたのは、「今を逃したら2度目はない」ってことが迷いようがないくらいはっきりしてたからではないかと。
「笑」さんの、「世の中、絶対と思っていることは、思ったほど絶対ではな」いっていうのもすごく、そのとおりだと思います。その気になっちゃえば、枠を超えるってハタから見るほど大したことじゃないと思えます。南雲みはるが些細な偶然から日常の枠を超えて、ふと、戻ってもやりたいことなんてないんだって気付く過程は私にとってはリアルでした。とりたてて嫌なものがあるわけじゃなくても、絶対に離したくないものもないんだと気付く感覚。このままふっと、気の向くままに適当に、遠いところへ行ってみたくなる気分。
主人公が最後に、後悔や未練を感じるのではなく、自分の妻をそれで良しと思えたのがよかったです。結局、過程において誰が何をしようと、最後に結論出すのは自分なわけで、カタチの上で選ばされようと選ぼうと関係ない気がします。
長々と書いてしまいました。ここまで読んでくださってたら、お付き合いして下さってありがとうございます、です。本でも映画でも、感想聞いたりするのって自分が見たものなら新しい見方があったり、まだ見てないものなら興味ひかれたりして好きなのですが、裏を返せば言うのも好きってことなんですね・・・。。
これからも「読書日記」楽しみにしてます。(ちなみに、オススメひとつ挙げておきますと、東京創元社から出てる加納朋子さんの『ななつのこ』です。既に読んでらっしゃるでしょうか?日常の謎、みたいな小説で、毒気がなくてちょっと甘いんですけどそこがいいです。)
と、いうわけでharuさんいつもご愛読ありがとうございます。『ななつのこ』は既読でしたので、加納朋子さんの最新作『虹の家のアリス』の感想を書いてみることにします。
この作品は昨年刊行された『螺旋階段のアリス』に続くシリーズ第2作目になります。全てが『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』に関連づけられた短編なので、流れる空気はとてつもなく乙女ちっくなものなのです。(しかし探偵役は仁木さんっておじさんなんですけどね)探偵助手として活躍する安梨沙も健在で、探偵の仕事を見つけるために日々奔走しているよう。
今回は特に「無垢な悪意」というのを感じました。加納朋子さんは日常の謎を中心に小説を書いていらっしゃいますが、ささやかな犯罪(それそのこと自体は大した罪にはならないものばかりなのだけど)にもちゃんと犯人は存在していて、そこから浮かび上がってくる人の心の暗部の方がよっぽど怖いこともあるのです。残虐な殺人は身の回りで起こりそうにもないけど、隣人の悪意はあるかもしれない。そういうことを考えるとなんだかもやもやしちゃってしかたないんですよ。そんな悪意から「君のことは僕が守る!」なんて宣言した男の人が出てきたりして、全般的に恋愛色が強かったところも面白かったですね。
本家アリスの物語への関連づけをするために、ちょっとこじつけっぽいところもあります。たまには「おいおい、そんな展開あるわけないでしょ」と突っ込みたくなるようなところも…でも、まあファンタジーミステリーだと割り切って楽しめばよいのです。最終話の展開を見ていると、シリーズ的にも大きな変化を迎えることになるようです。仁木探偵事務所の2人にはまたきっと会えそうです。楽しみに待つことにします。 |
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