テリー・ケイといえば、かの大ベストセラー『白い犬とワルツを』の著者。(実は読んでないんです、この本)癒し系本と言われたこの作品とはうってかわって、今回はサスペンスです。それも冒頭部分でいきなり衝撃的な殺人が行われて、そしたらその犯人が主人公だったんですねー。これがまた表面上は明るいいい男っぽくて、いつしか田舎町に溶け込んでそこで生活を始めてしまうのです。彼には宝探しという大きな目的があって、その達成のために手練手管を使ってヒントを持っていると思われる家族に取り入ります。女ばかり三人の家族なので、警戒心は人一倍強かったもののいつしかみんな彼に惹かれていくのでした。
読み手にとっては、この主人公マイケルが相当なワルだってことが分かっているので、ハラハラし通しです。それでも彼の行動や物言いを読んでいると、いつしかこちらも心を溶かされていくような気がしてならなくなってきます。(いかんいかん、だから悪い男に騙されるんだって)真相を知っている私ですらこれですから、精魂込めて取り入ろうとされている女性陣はたまったものじゃあありません。気がつけばぐちゃぐちゃの恋愛模様が目の前で展開されていました。
最近の言葉で言うと“サイコパス”というやつなのでしょうが、その狂気さはオブラートの中に包まれていてかすかに見え隠れする程度、あまりこってりとは書かれていません。それよりも、閉ざされた世界を形成している田舎町に新顔が入り込んで周囲を少しずつ少しずつ変えていくことの方が興味深く読めました。マイケルは自らが与えた筋書き通りにドラマを進めていきます。作り話のうまさには太鼓判を押しましょう。
あと、ここで描かれている時代・場所にはまだまだ呪術や土着信仰などの文化が多く残っていて、この辺が余計おどろおどろしさを醸し出しています。
外国文学と聞いただけで「くどい」「読みにくい」と敬遠する方がいらっしゃいますが、これはスラスラ読める本だと思います。上手いですねこの人。この後何点か翻訳出版が続くようなので、ぜひとも読み比べてみようと思っています。 |