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| 2002/10/1 |
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『オーデュボンの祈り』
著 者:伊坂幸太郎 出版社:新潮社
発行日:2000年12月 本体価格:1,700円
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『ラッシュライフ』で私を存分に唸らせてくれた伊坂幸太郎さんの新潮ミステリー倶楽部賞受賞作です。たいがい受賞作の単行本化には巻末に選考委員の講評が付いていたりして、それがなかなか面白かったりします。しかし、ここを読むということには諸刃の刃みたいなところがあって、下手をするとネタばれどころが酷評という大きな先入観を与えられてしまうことにもなりかねません。そうはいっても、自分が読んでいるこの物語を有名作家はどう読むのか?というのも非常に興味深いテーマなので大変気になるのです。今回も誘惑と戦いつつ先に本文を読破しました。
「なんじゃこりゃ」というのが素直な感想です。(そしたら奥泉光さんと馳星周さんが似たような感想を書いていてちょっぴり嬉しい)あらすじは知っていたんですが、やっぱり“殺人事件の被害者がカカシ”という設定は目を見張るものがあります。よりによって、舞台になっている荻島は江戸時代以来鎖国(日本から)していて、外界との交渉を断っているというのです。これもまた閉塞・限定した場所で起こる事件を描いた作品ですね。どうしても恩田陸作品とイメージがかぶるところがあるんですけど、気のせいでしょうか…
閉鎖空間だけあって、出てくる人は変な輩ばかり。突き詰めていくと皆どこか何かが足りないのです。それは幼くして失ってしまった両親の愛であったり、体の自由であったり、愛する妻であったり…そして荻島自体にもまた“欠けている”ものがあって、それをもたらすと(カカシに)予言されていたのが主人公の伊藤なのです。まぁ伊藤本人も自棄を起こしてコンビニ強盗やろうと思ったら失敗して、よりによって警官になっている昔のいじめっ子(これもまた非道い鬼畜系)に追いかけられていたところを拾われたという設定なので、ちゃんとした人物とは言い難いんですけどね。
カカシの優午は未来を予見できてしゃべることが出来るという能力を持っています。なのにどうして殺されてしまったか?というのがメインテーマです。ですが、全般的に謎めいた事が多すぎて殺人事件そのものはかなり印象が薄まってしまっていました。仮想の舞台を作った割に中途半端なリアリティがあったのもちょっと気になります。荻島でのストーリーとコンビニ強盗をやったままの現実がぶつかった時もうちょっと大がかりな衝撃があったらさらに面白くなっていた気がして残念でなりません。でも、謎めいた設定だけでもぐいぐい引っ張って読ませますから、もっともっとこれから奇想天外な話を書いて欲しいですね。期待しています。
あ、そういえば「不死身の竜はなぜいかにして殺されたか」ってテーマの本があったなぁとずっと考えていてようやく思い出しました。『殺竜事件』でした。オチも何となく似てましたね。 |
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