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| 2002/1/25 |
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『邪恋』
著 者:藤田宜永 出版社:毎日新聞社
発行日:2001年11月 本体価格:1,900円
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邪(よこしま)な恋ってどんな恋なんでしょう?不倫とか禁断の恋とかいうよりももっとエロチックで官能的な匂いがします。藤田さんの小説に出てくる男性は職人が多いのですが、今回登場するのは義肢装具士というちょっと聞き慣れない職業でした。笹森というのがその男の人の名前です。友人の妹の麗子という長年の愛人がいて、彼女の結婚が水の上に波紋を作るように彼の心に小さな波を広げていくのです。
その時出会ったのが、下肢を失った患者である美弥子という女性です。かたくなに義肢の装着を拒否する美弥子に興味を覚えた彼はまるで溺れるように彼女との恋にはまっていきます。徐々に徐々に笹森の心が傾いていくのですが、ふとしたしぐさに心を泡立てられる笹森の視線に微妙な感覚をもたらされました。なんだか読んでいるこちらもどこかから見られているようです。登場人物はどこか倒錯した人ばかりで、妖しげなサロンが出てきたりして同じ世界に生きている人がする恋愛という気がしません。でも、ふとした言葉や交わした視線は「あぁそんな事あるかもね」という既視感に満ちたものでした、だからきっと読まずにはいられないんでしょうね。
笹森と美弥子は“足”を通じて心を通わせていきます。美弥子に惹かれれば惹かれるほど麗子の見え方が変わってきて、その変化を結婚を決断したことで変わってきた麗子の精神に理由づける笹森の態度に非常に憤慨したものです(ま、わからないではないけどね)さらにたたみかけるように計算ずくで美弥子をさらっていく計算をするあたり、嫌な男ぶりを発揮。苦いお話でした。そうは言っても結局の所女の方がしたたかなのです。(苦笑)
切断した美弥子の足はたびたび幻肢痛に悩まされます。ところが、蟻が蠢いているような嫌な感じに苦しんでいたはずの幻の足は笹森の愛撫の元で性感を芽生えさせるのです。ないはずの脚を愛撫する笹森を描いたところは非常に印象的でした。精神的に高まっていくことがありありとわかるので、不気味さと美しさが共存していました。恋に溺れていく一方で二人とそれを取り巻く人々の恋は、綺麗事ではすまされません。どこかクールを装っていた笹森の顔が見え隠れする後半もなかなか面白かったです。いやはやしかし人の心って時に残酷なものです。参りました。
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