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| 2002/1/23 |
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『あかね空』
著 者:山本一力 出版社:文藝春秋
発行日:2001/10 本体価格:1,762円
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手にとった本のオビに「ああ、だめだ。堪えても堪えても涙があふれてくる。その涙が止まらない。『あかね空』は罪な小説だ。」という北上次郎さんの絶賛コメントが書いてあります。涙はとにかく“北上次郎絶賛”という肩書き(?)にめっぽう弱い私はすぐさま入手しました。(本当は直木賞受賞前に読んでおいて受賞と同時に胸を張ってUPしたかった・・)まあここまで言うのなら泣けるんだろうなぁと軽い気持ちで読み出した私は、もちろん後半クライマックスシーンで泣くものと信じ込んでいました。ところがどっこい84ページあたりですでにひと泣き。「人情」というものをここまで強く感じて心を動かされたことは久しぶりでした。
主人公の永吉は「江戸で京の豆腐を売る」という夢をもって単身下ってきます。貧乏長屋に住み着いた彼を支えたのは同じ長屋に住むおふみ。それまで江戸で食べられていた豆腐は堅い豆腐で、使う豆もそれほど上質なものではなかったようです。「これなら京の豆腐が圧巻出来る!」と踏んだものの、江戸っ子たちはなかなか食べ慣れた堅い豆腐から離れられません。でも、惚れあって一緒になったおふみのアイデアや、さりげなく手を貸してくれる周囲の人の優しさで“京や”は次第に繁盛していくのです。人々の優しさがたまりません、人ってこんなに優しくなれるものなんですね。
夫婦に子どもが生まれたところから、ちょっとずつ歯車が噛み合わなくなり親子・夫婦の愛憎が見え隠れし始めます。特におふみの変貌ぐあいがはげしくて理不尽なものを見せられている気もしないでもなかったのですが、意固地に固まった家族の心が次第に溶けだしていく終盤が見事でした。家族が歪む時って必ずあるんだろうけれど、同じ目標を持っていればきっとそれを乗り切れる。という事をしみじみ考えました。
単純に考えて一番泣けるシーンって死の瞬間かと思うのですが、この本では以外とさっぱりと人の死が書かれています。あざとさが無くていいなと思って読みつつも、よく考えてみると人が亡くなる時って唐突なものでその影響は日増しに大きくなっていくものなのですよね。中盤以降は人の死が絡み合ったストーリーなのでこの辺にもとても上手さを感じています。ご都合主義と言われるものがないとは言い切れません、でもそれをうち消すほどの臨場感があります。まるで下町の長屋にトリップした気分。
ここのところ食べ物の話ばかりですね。という声が聞こえてきそうです。でもあえて・・・心を込めて作っている事がわかる豆腐が美味しそうで美味しそうで、中でも時節柄湯豆腐のシーンは堪りませんでした。『センセイの鞄』を読んだときも食べたいと思った湯豆腐。今度こそ湯豆腐をつつきながら本の感想を伝えあいたいと思っています。
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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