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読書日記 2004年3月31日更新
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2001/7/17
『旅路の果て』

著 者:メアリー・フランシス・コーディ、田中奈津子
出版社:講談社
発行日:2000/10
本体価格:1,500円
サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』について、色々な人が語った『「ライ麦畑」に出会った日』という本がありました(絶版です)。人生を揺るがす一冊、ということならば、むしろ『赤毛のアン』と「出会った日」の話を聞いてみたいと思っていました。作家の氷室冴子さんが、少女時代に『赤毛のアン』を読んで、いかに自分が名作物語の主人公たちにダマされていたことを知ったか、という主旨の文章を書かれていたのを読んだ記憶があるのですが、あの物語のインパクトを語るだけでも、相当に面白いものではないかと思っているのです(オーケンのエッセイでも、アンについての文章を読んだ記憶があります。実は意外でもないんだけれど)。私は「腹心の友」になれるクチではなく、その共感は、むしろマシュウにあって(笑)、翻弄されつつ、ドギマギしながらも魅かれていく、というところが「アン」を見守るスタンス。多くの人たちにとっての心の一冊、『赤毛のアン』。あれだけの影響力を待つ、魅力あふれるキャラクターを作りだした作家、モンゴメリーにインタビューできるとしたら、貴方は何を聞きたいですか。

この『旅路の果て』という作品は、作家モンゴメリーと、彼女の「最後の友人」となる少女との、数日間の交流を描いたものです。おじいちゃんの家の預けられたローラは、近所に住む、おじいちゃんの幼馴染みであるミセス・マクドナルドのことを教えてもらいます。『ここ数年、つらい思いをしてきたようでね。いまでは家にとじこもったきりだ』というミセス・マクドナルドは、あの『赤毛のアン』の作者、モンゴメリーであるとのこと。ローラは驚きます。だって、このこわばった体のおばあさんが、あの若さの喜びにあふれた物語を書いた人だなんて。『あの若い主人公たちは、とっくにすぎさった過去のものよ。もうかかわりあいたくないの。セアラ・スタンリー、エミリー、アン、キルメニー・・・もう、うんざり』、ミセス・マクドナルドはそう言いながらも、話しかけてきたローラに興味を覚えていきます。そして、ローラに庭の植え替えを手伝ってもらいながら、あまり幸福とは言えなかった自分の生涯について語っていくのです。『あなたは<あいよぶ魂>だという気がしているの』。おお、そのフレーズよ。ローラは(まさに愛読者に代わって)モンゴメリーに沢山の質問を投げかけます。しかしながら、老作家と少女との交流は、やがて終わりを告げなければなりません。人生の最後に心を打ち明けられる知遇を得たことは、モンゴメリーの生涯の一筋の光明ではなかったかと・・・。

残念ながら、この物語はフィクションです。モンゴメリーの生涯については、遺された日記から詳らかになっている部分が多く、幸福とは言いがたかった結婚生活、また『赤毛のアン』を越える作品を創り出せない作家としての苦悩など、この本で語られていることは事実に基づくもののようです。沢山の人々を励ました優れた作品を世の中に送り出しながらも、幸福ではなかった作家の晩年に、一人の小さな「親友」を送りこむこと。ふと、キンセラの『シューレス・ジョー』という作品を思い出しました(映画『フィールドオブドリームス』の原作です)。天啓を受けた男が、作家サリンジャーの「苦痛を和らげる」ために、隠遁生活を続ける彼を、自分の作った野球場に連れていくというお話。有名作家が「登場人物」として描かれる作品は、そういえば、いくつか思いつくのですが、やはり、多くの人々を幸福にする物語を遺した「優れた感受性」を持った人物こそ、その実人生の中で、幸福な出来事を享受して欲しいという願望があるのでしょうか(どうでしょう)。モンゴメリーの晩年に、本当に、ローラのような子がそばにいてくれたなら、と願いたいですね。さて、この『旅路の果て』は、今年の高等学校の部の「課題図書」です。今どきの高校生はどんなふうにこの物語を読むのかなあ、と感想文が発表になるのを、楽しみにしています。
【楽天ブックススタッフ 知】


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