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| 2001/6/29 |
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『八十歳のアリア』
著 者:糸川英夫 出版社:文春ネスコ/文藝春秋
発行日:1992/07 本体価格:1,456円
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先日、NHK番組「プロジェクトX」で国産ロケットH2のプロジェクトが取り上げられていました。その冒頭で、日本のロケット第1号となる、ペンシルロケットを打ち上げた人物として糸川英夫博士が紹介されていましたが、この本は、ロケット博士と呼ばれた著者が、45年という歳月をかけて作り上げたバイオリンの物語です。
まず、発想が面白い。
「バイオリンはクレモナの職人が精魂込めて造ったからいい音がするんだ」という音楽家に対してクラシックの楽譜を分析し、その中で最も多用されている「音」を調べてみたり、知り合いから、バイオリンの名器、ストラディバリウスを借り受け、分析装置にかけて調べてみたり、波動方程式!による解析結果から設計してみたりと、科学的に挑戦していきます。
いい音さえ出れば、形はどうでもいいから、四角いバイオリンにしようかと思った、とか、ニスなんて塗っても塗らなくても音響的には関係はないから、一番安いニスを塗ろう、という、反骨というか現実的というか、その姿勢に小気味好さを感じます。
また、バイオリンの話とは別ですが、こんな話も紹介されています。糸川博士が周りに内緒でひそかにバレエの練習をし、いきなり舞台に立ったことがあるそうです。バレエは足を高くあげる必要がありますが、年だから足が上がらない、そこで、新聞紙を積み上げ、そこに足を乗せる練習をする。新聞は毎日一部づつ増やしていくと、気がつくと目標の高さに届くようになっている。もちろん、足を上げるだけではなく、練習もする。そうやって練習を重ねて舞台に立つと、その練習を見ていない周りの人は、あの人は天才だ、とか、何でもできる人だ、と大騒ぎする。でも、見えないところで努力しているからこそ、舞台に立つことができるんだ。
良い話じゃないですか。
他にも、戦前戦中は戦闘機の設計を手がけており、そのために、予科練の隊員と一つ屋根の下で寝起きして戦闘機の設計に役立てた、とか、空母から戦闘機が離艦する時の方程式や、魚雷投下時の潜度などを計算し、真珠湾攻撃を成功させ、そのため、戦時中からアメリカにマークされ、終戦後は飛行機開発から追われ、代わりにロケットにのめり込んだ、という話も紹介されています。
糸川博士は2年ほど前に亡くなられましたが、バイオリン、「ヒデオイトカワ号」は健在なので、一度、その音色を聞いてみたいですね。 |
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【楽天ブックススタッフ 久】 |
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