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読書日記 2004年3月31日更新
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2001/5/14
『天才柳沢教授の生活(17)』

著 者:山下和美
出版社:講談社
発行日:2001/04
本体価格:457円
ラーベの『雀横丁年代記』が2001年春の岩波文庫の復刊フェアで復刊されました。19世紀のドイツ文学作品。以前から読みたいと思っていた本です。孤独な老人が、かつて憧れた女性や、彼女の心を勝ち取った自分の親友、そして、夭折した二人の遺児を育てる日々を回想しながら、過去また現在にいたる「横丁の年代記」を綴り続ける作品。大きなドラマもない、市井の人々のささやかな物語です。岩男淳一郎さんの『絶版文庫発掘ノート』(この本自体も絶版です)に、戦争中、出征したある人が戦地に持参した文庫であったとの逸話が載っており、そんなことからも興味をひかれていました。しかしながら、同書を書いた時、ラーベは弱冠二十五歳であったとか。老人の「達観」を若人が描く時、その境涯については、一抹の理想が描かれているのではないかと想像します。「過去」の歳月は熟成されて、記憶の中の結晶となるかどうか、体験してみなければわからないことですが、かくあって欲しいとの希望はあります。老境の物語といえば、昨年、藤沢周平氏の『三屋清左衛門残日録』を読みました。現役を退いた元側用人が、その隠居生活の傍ら遭遇する、やはりささやかな事件の数々を描いたもの。この作品について『人生を振り返り、自分が関わった人々との関係を、清左衛門は徐々に「精算」していく』とネットで書評を書かれている方がいて、うむ、と思ったものです。人生のどこからかに折返し地点があって、「回想」と「精算」の日々に入っていく、ちょっと寂しい気もしますが、それもまた、美しい歳の重ね方なのかも知れません。清左衛門の「残日」の過ごし方もまた理想の老境のひとつですね。

さて、こうした枕の後に続けるのもなんなのですが、『天才柳沢教授の生活』の最新刊(十七巻)の紹介です。楽しみに待っていた一冊。柳沢教授は勿論のこと、ヒロミツ君、華子ちゃん、お母さん、世津子さん、と、おなじみのメンバーも健在です。特にヒロミツ君のふがいなさとカッコ良さは際だってました。十年来の連載作品で、教授の年齢は固定のままですが(顔は幾分、丸くなられたかと)、老いてなお・・・というより、少年時代から変わらずの旺盛な研究心と発見に満ちた日々を送られています。このコミックスを読むと、私は、とても元気が出るです。柳沢教授は探求心旺盛な「学者」であり、彼の研究フィールドは「経済学」。しかし、その関心と研究テーマは、むしろ経済を動かす「人間」にあります。象牙の塔にたてこもる学者ではなく、広く、コミュニケートし続け、真理に迫ろうとします。六十七歳、という設定だったと思います。現代においては、老人と呼ばれる年齢ではないと思いますが、未だ「精算」され得ない現在を進行形で生きる、折り返し地点を迎えていない人物像には、多いに励まされる、というか、可笑しくも、愛おしい、そして、心から尊敬してしまうのです。

この第17巻では、周囲の人たちの「葛藤」を注視するに留まり、教授自身の「葛藤」はあまり描かれていません。私が、教授を最も魅力的に感じるのは、理路整然と生きようとする自分自身に潜む「感情」という心の不思議を発見した時ではないかと思っています(スタートレックのミスタースポックの稀に見せる「感情」がとても魅力的であるように)。自分が信じていた「理路整然とした自分」が崩れる時、その瞬間を、教授は、かすかな「葛藤」を抱きながらも、莞爾として受けとめることができます。そして、未だに「成長」し続けるのです。柳沢教授は過去よりも、まだまだ未来に向かって発見と成長を続けます。折返し地点なし、これもまた「老境」に対する理想のひとつではないのでしょうか。連載当初は極端に生真面目な「大学教授」の現実とのチグハグが可笑しいコミカルな漫画だったものが、いつの間にか文芸作品とよぶべき良い風格を持つようにいたったのは驚きです。この巻、収録の小話の各最終ページの持つ余韻も、味わい深いものがあります。この巻からでも手にとっていただきたいと思うコミックの傑作です(傑作選もありますので、是非)。

ウェーバーの『職業としての学問』を学生時代に読んでから、もう10年以上になります。はっきりと内容を覚えていませんが、この頃、現在の視点でもう一度読んでみたいと考えています。「柳沢教授」は、経済学のみならず「人間」についての探求者であり、それゆえに理想の教育者でもあります。私の指導教授も、私の考える拙い着想について耳を傾けてくださる方でしたが、柳沢教授は、まさに理想の先生であって、こんな先生がいるなら経済学部に今からでも通ってみたいな、なんて思っている今日この頃です。なせだか読後に勉強や研究がしたくなる、世の中が少し広く見えるような気分になる不思議な作品です。
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