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| 2001/2/9 |
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『敵』
著 者:筒井康隆 出版社:新潮社
発行日:2000/12(単行本1998/01) 本体価格:2,200円
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75才の渡辺儀助。愛妻に先立たれ、大学教授の職もリタイアして15年。悠々自適な人生を送っている。そんな彼の日常を描いたのがこの本。そんな私小説なのか?なんて思ったら大間違い。ここに筒井マジックが炸裂しています。年をとったせいか、妙に目覚めるのが早くて。だけど、隣家に迷惑なので朝からなかなかにぎやかに朝食の支度は出来ない。朝食にはご飯と決めていて、炊き方には非常にこだわりをもっている(お米の銘柄にはこだわりはないらしい)朝ご飯を食べていると雀の催促があったりする。痴痴痴痴痴痴宙宙宙注注注・・・ん?なんだこりゃ。と「なんか仕掛けが始まったな」と思わせる記述がいくつか。しかし淡々と日常描写はすすみます。その描写たるやおかしいくらい細部に緻密。押入の中に入っているものだとか、魚の焼き方だとか、食べだとか。とにかく料理についての記述は非常に面白いんです。お歳暮にもらったものだけで、食卓が出来ていくさまは笑えます。決して豪華じゃないけれど、とっても美味しそうな食卓が出来上って、思わず舌なめずり。
渡辺センセイはパソコン通信で若者の会話を覗くのも趣味です。そんな中に「敵です。皆が逃げはじめています」というメールが入ります。ちょっととぎれとぎれのやりとりが不気味だなぁと思っているとそれをきっかけにしたように、日常が非日常に向かって動き始め、境界が曖昧になっていきます。そのうち渡辺センセイが秘かに心を寄せている昔の教え子だとか、もう亡くなってしまった奥さんだとかが夢に出現し始め、気がつくと白昼夢のように妄想になっていたり。あぁ渡辺センセイは惚けちゃったんだろうかなんて事を思っていると、ちょっとそうでもないらしい。これがきっちりした日常に生じたひび割れ→つまり老い、と言うことなのかなぁと考えてしまうワケなのです。
私が読んだのは文庫版でしたが、単行本版は箱入りの豪華な作りだった気がします。いやはや筒井センセイやってくれますね。(写真でみなさんに見ていただけないのが残念です)年をとって一人の生活が寂しくなったときにまた読もうと心に決めました。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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