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読書日記 2004年3月31日更新
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2001/2/27
『ひきこもりカレンダー』

著 者:勝山 実
出版社:文春ネスコ/文藝春秋
発行日:2001/02
本体価格:1,500円
全国に80万人はいると言われている「ひきこもり」の人たち。彼らの「生活と意見」聞きたくてたまらん、とは、あまり思わないのですが、まあ、気になる存在です。というのも、私自身、わりと精神的に不安定なところがあって、すぐ人と会いたくない状態に入ってしまうので、会社員なのに大丈夫か、実際(笑)。例の「新潟少女監禁事件」のような「ひきこもり」の人の犯罪が発覚すると、「ひきこもり」全般が悪いような扱われ方をします。すっかり社会問題です。とはいえ、社会的に認知されたからといって、それでどうにかなるわけでもないし、肩身の狭さは変わらない。「ひきこもり」問題の深層にせまるには、やはり当事者の声を聞きたいもの(聞きたいかな)。本書、『ひきこもりカレンダー』は、ひきこもり実践継続中である勝山実さん当人が、幼少時からの記憶を遡り、「ひきこもり」への転落(語弊あり。「転身」とすべきか)、そして現在を「ひきこもり」として生き抜く術を語ってくれる手記です。勝山さんの特異な言語センスが光る一冊。

『バスジャック犯は同志です。新潟の少女監禁事件の犯人はただの犯罪者です』。無論、殺人という行為は許されないが、一人で部屋に閉じこもるという孤独にさえ耐えられない人間は「ひきこもり」ですらない。共感の余地なし。母親に「寄生虫」と罵られながらも、自分がこんな状態になったのは、全面的に親が悪い、それゆえに親は子を責任持って養うべき、と主張する哲学。「ひきこもり」の立場から社会を捉える姿勢には、はっきり言って首肯しがたい部分も多いのですが、その世界認識には虚をつかれるようなところもあります。また、基本的にユーモアがあって面白い。愛読書、『山椒魚』というのも、こう言ってはなんだけれど可笑しい(『山月記』もお勧めだとか)。永遠の『自宅待機』を生きる日々。『ひきこもりの人は自分は何もしていないなんて、間違っても思わないで下さい。ボクらが一番ハードにこの世と戦っている人間なのだから』。あまり、うしろめたさのないカジュアルな感覚になってしまうのはどうか、とも思うのですが、どうにか心を軽くして、世の中の色々なことを享受できるようになればとは思います。書いてある内容は重いのに、妙に飄々としている。「なに甘えたこと言っているんだ」と一蹴されそうなコメントも多いものの、第三者のうがった「考察」より、同じ境遇の人たちや、その家族たちには何らかの契機となる可能性はあるのかも知れません。

本書の巻末には、勝山さんと精神科医、斎藤環さんとの対談が掲載されています。お二人のやりとりが実に面白い。斎藤環さんは「ひきこもり」研究の専門家。以前読んだ、著作『社会的ひきこもり』には随分と考えさせられました。自由であること自体が葛藤となる『思春期の時代』。自由な世界であるゆえに、その中で何もできないという挫折感、つまづき。自分自身をさらすことを恐れ、ひきこもらざるをえなくなってしまうのは、やはり、社会が責任を問われるところなのか。さまざまな「ひきこもり」事例と、その治療についての、こちらも興味深い一冊です。さて、本書の解説の中で、斎藤環さんは、社会的選択枝の一つとして「ひきこもり」が認められるべき、と主張します。その具体的モデルとして、勝山さんに「ひきこもり」界のカリスマならぬトリックスターになって欲しいと期待を寄せています。自分自身を戯画化できるその才能。「ひきこもり」という状態が、ありきたりな語彙で捉えられるのではなく、もっと豊かな言葉で語られていくことで、その状態からの脱出をサポートすることもできるかもしれない。「一人でダメをこじらせない」は「ダメ連」の主張ですが、もう少し、こうしたテーマについて、多くの人たちが気軽に語り合えるものとなるならば、光明は見えてくるかも知れません。表現者となった「ひきこもり」の人、勝山実さんの今後の活躍に期待したいところです。
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