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| 2001/2/19 |
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『おいしいっていわれるくどき料理』
著 者:飛田和緒 出版社:講談社
発行日:2001/01 本体価格:1,800円
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東京で一人暮らしをする若い人たちの台所や冷蔵庫の中身を撮影した写真集があると聞き、見てみたいなあ、と思いつつ未見のままです。同世代の「生活感」にそれほど興味があるわけでもないのですが、皆さん、何をどのように食べているのだろう、ということには、わりと関心がある。料理研究家では、少し年上の飛田和緒さんや、年下のケンタロウさんが、同世代のトップランナーですので、その「食生活感」には、やはり注目したいところ。栗原はるみさん、有元葉子さんなど上の世代の方たちの料理本とはまた違った感覚で楽しんでいます。ということで、飛田さんの新刊をすかさずチェック。これもまた興味深い一冊。
飛田和緒さんは、後にご亭主となる木下さんと出会った時、何も話すことができず、電話でも手紙でも自分を伝えることができなかったと言われます。だけれど、料理をはさんでなら自然とふるまうことができる。『料理をすることが自己表現の手段であり、料理を食べてもらえば私をわかってもらえると信じてました』。かっこいい。この自信。なかなか言える台詞ではないかと思います。この本の「くどき料理」とは、言葉によらず、料理で想いを伝えるというもの。たとえばプレゼントでも、その人の心に届けたいのなら、相手の気持ちを考えてセレクトすることが大切。相手の本当に好きなものをさりげなく用意してあげたい。そういう心遣いや、思いやりにあふれた、どうして素敵なコンセプトの料理本でした。自分の想いを伝えられる、言葉ではない「言葉」がある、というのは良いですね。第1章は『ここでは夫が好きな定番メニューをご紹介することにします』ということで、飛田さんのご亭主をくどくレシピが披露されています。それぞれ自分の大切な人に作ってあげるには微調整や、カスタマイズが必要となりますが、こういう「気持ち」をまず見習いたいところ。しかしながら、やはり、私たちの世代の男性の好み、というと、子どもっぽい味覚になってしまうのか知らん。飛田さんのお家の食卓を飾っている料理の数々、レシピはいたってシンプルですし、同世代の方には、豊かなライフスタイル全般も含めて参考になるところも多いのではと思います。本としても、凝ったレイアウト、美しいビジュアルで眺めているだけで楽しい。ところどころ対話形式になっていたり、読者からもらったメールを紹介したり、と新しい世代感覚に溢れる料理本です。
「くどき料理」で思い出しましたが、清水ちなみさん編集のOLの投稿を集めた料理レシピ『サルでもできる料理教室2』には、「男こましたる」というコーナーがあります。『だしはきちんと取り(にぼしがオススメ)、みそはその男の出身地のみそを使う。これポイント』…という具合に、料理でいかに男性の心をとらえるかという、ちょっと思いやり的コミュニケーションとは違うけれど、これもまた目的意識がはっきりしています。「おいしいものを作ってあげられる私」効果は恋愛においていかばかりか。やっぱり「郷愁」に訴えたり、「手のこんでる感じ」を演出したりすると喜ばれるものなのか(成功率が知りたいですね)。ある男性作家のエッセイで、男心にとどめをさすのは「ちくわの磯辺揚げ」だと主張しているものを読んだ記憶があります。もはや「オフクロの味」ではなく「給食幻想」に突入。これもまた世代感ですね(本書『おいしい〜』にも「ちくわの磯辺揚げ」のレシピが載っておりますが、給食の味とは遠いかな)。ところで、この「サル料」、「レトルトのおかゆに、佃煮のこんぶを入れる」など、本当にサルでも調理可能なのでは、というレベルから、魚柄先生はだしの節約系、思わぬアイデアに驚かされるものまで、なかなか楽しめる一冊。材料も調味料も分量が書いてないところが、料理に正解などないんだ、という心強い励ましになっているような気もします。あまり難しく考えることもない。作りたいように作れば良い。まったく料理ができない、『セイシュンの食卓』にも挫折した、そんな人でもなんとかなる、かも知れない(保障しません)。「くどく」には、もう少し、腕を磨いてからが良いかも知れませんが、なんとかやってみよう、という前向きな姿勢に心打たれる人もいるかも(どうでしょうね)。それもまたひとつの「自己表現」。こちらの方が、ある意味、同世代感に溢れているのかな。
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【楽天ブックススタッフ 知】 |
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