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読書日記 2004年3月31日更新
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2001/2/13
『アントニオ・カルロス・ジョビン』

著 者:エレーナ・ジョビン/国安真奈
出版社:青土社
発行日:1998/10
本体価格:3,200円
このところ通勤時にジョアン・ジルベルトの古い録音を集めたアルバムを聞いています。約40年前、ボサノヴァ草創期のもので、実に38曲もの演奏を収録。ここからボサノヴァが誕生したと言われる『想いあふれて』他、約3分の1がアントニオ・カルロス・ジョビンの作曲によるものです。通勤読書の本書のBGMには最適の一枚。ジョビンの作曲、ジルベルトのギターと歌で、後に「ボサノヴァ」と呼ばれる音楽ジャンルがこの世に生を受けました。本書は『ボサノヴァを創った男』、偉大な作曲家、アントニオ・カルロス・ジョビンの生涯にわたる音楽への取り組み、また彼が心の中に抱いていたものを伝える、実妹による伝記です。ジョアン・ジルベルトを始めとして、ヴィニシウス、ナラ・レオン、バーデン・パウエル、スタン・ゲッツなどのボサノヴァ史を飾った多くの名前を見つけることもできます。ジョビン、そしてボサノヴァを愛する方には、是非、お勧めしたい一冊です。

音楽にあまり興味がない方でも、『イパネマの娘』『黒いオルフェ(カーニバルの朝)』『波』などのメロディーには聞き覚えがあるかも知れません。ジョビンの楽曲は、世界中を魅了し、彼が亡くなった現在も聞き継がれています。『僕はたくさんの手紙を貰ってきた。知らない人々が、僕の曲のおかげで自殺しないですんだと書いてくるんだ』、亡くなる直前、ジョビンは妹にそう語っています。彼の音楽がどれほどの救いをもたらしたか。埋葬を前に、ジョビンの死を悼む弔問客の列はとぎれることなく、歩み出た盲目の老人は『この人は聖人だ。彼の曲は私の人生の楽しみだった・・・』と遺体に近寄っていく。多くの民衆に愛された作曲家。本書では、高祖母(祖母の祖母)の代に遡り、その家系からジョビンが物語られていきます(まるで『百年の孤独』のようでしたよ)。ジョビンを取り巻く人々、家族との絆、そして彼が生まれ育ったブラジルの日常の記憶がことこまかに描かれ、その中にこそ彼の音楽の世界が浮かびあがる。柔らかく、憂いを秘めた弱音。複雑な和声と軽快なリズム。単なる音楽形式としてではなく、その背後にあるものを含めて感じとることができたなら、もっとボサノヴァを理解することができるかも知れません。この本を読んで、少しは近づくことができたかな(どうでしょう)。

巻末に山下洋輔さんによる、ジャズから見たジョビンの作品とボサノヴァについての解析が掲載され、伝記の中では触れられていない音楽の理論や技術的な部分が補完されています。多少、ジャズのコード理論をかじったこともあるので、これも興味深いところでした。ジョビンの音楽は、ジャズという大海から打ち寄せられた小波ではなく、彼自身の、矜持を持った音楽であるということ。楽譜の上からだけでは見えない、作曲家の作品に寄せる想い。それがどれほど多くのものを音楽に加味しているのでしょうね。
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