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| 2001/12/20 |
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『すべての雲は銀の…』
著 者:村山由佳 出版社:講談社
発行日:2001/11 本体価格:1,800円
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恋人を寝取られたという話はありがちですが、この主人公の祐介くんの場合は強烈かつ悲劇的!なんと恋人を奪ってしまった相手が実の兄だったのです。ショックで心を引き裂かれ、人を愛せないと思った祐介は親友・タカハシの誘いにのって大学を放りだし信州菅平へと逃げてきました。信州で彼を迎え入れたのは密かな人気の宿(ペンションみたいなものでしょうか?)スタッフの仕事は接客にとどまらず朝から晩まで働きづめだし、オーナー(園主)は風変わり。それよりさらに変わっている瞳子さん(彼女は若くして夫を失った未亡人、とてもタフな女性です)やその息子である健太がいてとにかく賑やかです。
ワイワイやりながら楽しく傷が癒えていくのかと思いきや、彼と宿(かむなび)を取り巻く人々はそれぞれに心の傷や深い事情を抱えています。花綾ちゃんたち花屋コンビの娘さんは自分たちの将来に不安と期待を抱いていて、茂市さんの孫の桜ちゃんは登校拒否。お母さんはそんな娘と上手く心を通わせることが出来ない。瞳子さんのダンナさんは実はエジプトで行方不明になっているだけで生死の確認が出来ていない・・園主にもなんだか秘密が・・・そういったエピソードが交互に語られていき、登場人物がみんな成長していくとても気持ちの良い小説でした。
一番深刻に描かれるのはもちろん祐介ですが、かつての恋人由美子は兄と結婚(それも出来ちゃった結婚)をする事になり、ますます心の傷が深まっていきます。読んでいて一番胸が締め付けられたのはここの家庭が崩壊に向かってしまっていること。ほんの心のねじれが生んだ恋愛なのに、笑顔を奪うだけのものになっちゃったのか・・とかなんだか考えさせられました。裏にあるテーマは非常にシリアスなのに、全然暗い気分にならないのは登場人物の心を一貫して流れる心の強さと人への思いやりなんでしょうかね?
カラダを動かして働くことっていいことなんだなぁとしみじみ感じさせられています。日頃パソコンと向かい合っている日々だけに太陽の下で伸びやかに労働する登場人物たちがまぶしく映りました。誰がというわけではないのに、一人一人が誰かの笑顔の元になっている、そんな人間関係がこの中にあります。師走の殺伐とした慌ただしさの中で清涼剤のようなひとときをいただきました。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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