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| 2001/12/14 |
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『愛の領分』
著 者:藤田宜永 出版社:文藝春秋
発行日:2001/05 本体価格:1,714円
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いい加減くどいかなぁと思いつつ書いているのですが、藤田作品の中で一番好きなものはやっぱり『樹下の想い』なのです。特に秘められた想いの描写と、詳細に書き込まれた植物描写が好きだったので今回もその2点を垣間見ることが出来て嬉しく思っています。
妻と死に別れた淳蔵は東京・白金でテーラーを営む仕立屋。昔なじみの友人が紹介した佳世は、信州で植物画を描き続ける画家です。友人の昌平は昔遊び歩いた悪い友人で、実はその妻(美保子)と淳蔵は過去に秘めた関係がありました。佳世は昔不倫相手の自殺という心の傷を経験しています。影を抱えた淳蔵と佳世は惹かれあい、いつしか恋に落ちる・・というのがストーリー。“秘めに秘めて最後にようやく想いを遂げる”というパターンの話が好きなので、今回はまだまだ秘め方が足りないなぁと思えてしまうところがちょっと不満でした。もしかしたら官能的なシーンが割と露骨だったので余計そういう気がしたのかもしれませんね。
佳世も淳蔵も現在は独り者ですので、年が離れていることを気にしなければ二人の結婚を阻むものはないはずです。でも、二人は密会を続け、逢うたびにお互いの体を貪りあい慈しみあいます。密会にこだわっているからなのか、それが非常に隠微で久しぶりにゾクゾクしました。精神的に二人を阻む存在として淳蔵の息子の信也がいます、彼は亡くなった妻の想いを大きく引きずる原因となる存在なのです。さらには過去関係していた美保子の嫉妬。佳世の男性関係・・と二人を取り巻く糸は絡みに絡まっていきクライマックスへと向かいます。
愛には領分というのがあって、たとえお互いが愛し合ったとしてもその領分を分かち合える者同士でないとダメなのだというセリフがありました。何だかとっても深いセリフですね。 |
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【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
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