| <<前日の日記へ | 翌日の日記へ>> |
| 2001/11/28 |
 |
『黄金の島』
著 者:真保裕一 出版社:講談社
発行日:2001/05 本体価格:2,000円
|
信じる者は救われるとは言うけれど、ここのところの大事件が信仰心に基づいたものなのでこの言葉が怪しく感じられます。それはさておきこの小説に出てくるベトナム人達の、黄金の島ジパング信仰は並大抵のものではありません。とにかく貧しい中でお金持ちを目指して頑張るシクロ乗りたちが主人公です。貧しい事を描いた小説はあまたとありますが、中でも貧しさを感じたのが「古タイヤを切ったようなゴムにパンツのゴムをつけたゴムぞうり」という表現。この言葉以降、ベトナム人たちの貧乏脱出の渇望がヒシヒシと心に伝わってきました。
迷えるシクロ乗りたちを黄金の島へ導く役はヤクザの坂口修司(タチバナという偽名を使ってます)が担います。彼も暴力団組織の力関係から日本を追われ、さらには命を狙われての隠遁生活の末求めた日本渡航です。まぁもちろんそんなわけなので、普通に出国して日本を目指すことなんざ出来ず、船を見つけて密航という暗ーい航海が待っています。
シクロ乗りたちに目を付けて賄賂を要求したり、牢獄へ叩き込んだりする悪徳警官や、密航詐欺なんてのが横行したりしてそれを切り抜けているうちにページはどんどん進み、気がついたらベトナムから出るまでに大半のページが終わってしまっていました。そんなわけで、日本側でのシクロ乗りたちの活躍はほとんどないまま終わるのですが、逆に日本で展開されているのは暴力団組織で坂口の命をつけねらう砂田とその情婦の奈津たちの攻防です。奈津は実は坂口ともできていて、坂口にとっても日本に帰りたいと願う第一の要因は彼女の存在があるからなんです。でも、奈津は砂田の庇護下にあるという立場を捨てることができず、身に降りかかる火の粉は力ずくで払いまくるというしたたかさを見せたりします(これが一番後味が悪かった・・)
途中日本に憧れる少年たちが坂口に日本語を教わるシーンがあるのですが、そこでの真摯な受講態度になぜだか痛く感銘を受けました。何かを求める強い想いがない限り、真剣に学ぶと言うことは難しいんでしょうね。日本信仰に凝り固まる彼らに「日本だってお金を得るための仕事で苦しみ自殺する人が何人いると思う!」と叫んだ坂口のセリフは妙に寒く心に響きましたが、なんだかんだいっても幸せな毎日を送れることにあらためて感謝した今日この頃です。 |
|
【楽天ブックススタッフ 瑞】 |
|