この本、東京創元社のY氏からのおすすめで読んだものなのですが、実はまったく著者の名も知りませんでした。しかしながら、帯がとっても良い!こんなふうに書いてあります。
処方箋/本書を次のような方にお薦めします
適応症:北村薫『空飛ぶ馬』天藤真『鈍い球音』都筑道夫<退職刑事シリーズ> 泡坂妻夫『奇術探偵曾我佳城全集』が好きでたまらない人に。
と、言うのが本書で解説を書いている新保博久さんの言葉なのですが、北村薫・天藤真という2人の名前を見たら読まないわけにはいきません。
この話の主人公は、虹森多佳子という謎めいた女性。実は彼女はプロ野球チーム“東海レインボーズ”のオーナーで(よりによって野球音痴)普通の観客席に座って観戦をしては、周囲で繰り広げられる会話を聞いて事件の謎を解くという安楽椅子探偵でもあります。短編5編で出来ている連作ですが、シーズン開幕から終盤まで時間が流れていくので。弱小球団が優勝の夢に向かう野球小説としても面白く読めます。
読んだ印象は加納朋子さんの小説に近かったように思います。柔らかな文章の中に描写される観客席の喧噪(ガラガラなんですけどね)がとても生き生きしていて心に残りました。全てが短編だったので人の描写が少なかったのが残念です。もっと人を書いて欲しかった、多分良いものを書いてくれるはず!とささやかな期待を寄せています。この話自体は1994年に自費出版されたものを文庫化したものなのですが、最近新作も出ました。(赤ちゃんをさがせ)今度の主人公は助産婦さんだそうで、虹森さんに会えないのはちょっと残念ではありますが、プロ作家第一作をどう書いているかが楽しみです。
でも、やっぱり一番心をとらえられてしまったのが、帯と解説なのです。新人を紹介するのに「○○が好きでたまらない人にお薦め」というコピーは一番分かりやすく心を惹かれますね。こう並べられると未読だった「曾我佳城全集」も読まなきゃ〜という気にもなってしまいます。いや、参りました。
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